沿革年表 1930〜2026年における重要度別の出来事(合計39件)

年月区分社長/CEO出来事年度売上高純利益
世界初の酸化物磁性体「フェライト」の発明
東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が世界初の酸化物磁性体「フェライト」を発明。1932年に特許を取得。TDK創業の原点となった基礎研究。
1930
1-12月
重要事項
フェライト工業化の決断
歴史的意義yutaka sugiura
齋藤憲三は「2勝98敗」を自認する連続起業家であり、加藤博士は「欧米の模倣ではない日本独自の工業」を志す研究者であった。両者の出会いは偶然だが、フェライトの工業化に踏み切れたのは、鐘淵紡績の津田信吾社長が私財10万円を提供したからである。会社の資金ではなく個人の財産を投じたという事実は、当時のフェライト事業が合理的な投資判断の範囲外にあったことを示唆する。大学の基礎研究を工業化するディープテック型の起業が、志と人脈と個人資産の組み合わせによって実現した構造は、90年後の現在から見ても示唆に富む。
1935
1-12月
フェライトコアの製品化に世界で初めて成功
TDKは世界に先駆けてフェライトコアを製品化し、日本の無線通信機やラジオに採用された。蒲田工場を新設し、本格的な量産を開始。
1937
1-12月
設備投資
蒲田工場を新設
創業翌々年に東京・蒲田工場を新設し、フェライトコアの量産体制を整備した。世界初の酸化物磁性体の本格的な工業化に踏み出した拠点となった。
GHQがスーパーヘテロダイン令を交付
GHQが雑音の少ないスーパーヘテロダイン方式のラジオ生産のみを認める通達を交付。この方式には中間周波トランスが必要で、部品としてフェライトコアが不可欠であった。TDKはラジオ部品メーカーとして戦後の急成長を遂げる。
1946
1-12月
セラミックコンデンサーの生産開始
フェライトの焼成技術を応用し、セラミックコンデンサーの生産を開始。現在の受動部品事業(売上構成比25.4%)の起点となった。
1951
1-12月
設備投資
清水工場を開設・磁気テープ生産開始
東京・清水工場を開設し、磁気録音テープの生産を開始した。1953年の製品第1号発売へつながる量産設備の整備にあたり、後の磁気テープ世界首位の出発点となった。
1952
1-12月
磁気テープ製品第1号を発売
1951年に開発に着手した磁気テープの最初の製品を発売。保磁力は不十分だったが、磁気テープ事業の出発点となった。
1953
1-12月
NHKの放送用テープとして認定
磁気テープの品質向上に注力した結果、NHKの放送用テープとして認定され、200巻を受注。品質の公的認定を得た。
1957
1-12月
FY60
1960/3
売上高
14.7億円
当期純利益
1.48億円
組織再編
事業部制組織形態を採用
事業部制組織形態を採用した。フェライト・磁気テープ・コンデンサと多角化が進んだ製品群を効率的に運営するための社内体制を整えた。
FY62
1962/3
東京証券取引所に株式上場
FY63
1963/3
売上高
43億円
当期純利益
2.53億円
FY64
1964/3
売上高
55.7億円
当期純利益
2.43億円
FY65
1965/3
売上高
58.3億円
当期純利益
2.9億円
米国ニューヨークに現地法人を設立
TDK Electronics Corporationを設立。海外拠点展開の起点。
FY66
1966/3
売上高
93.3億円
当期純利益
4.5億円
重要事項
フィリップスと特許契約を結び国産第1号カセットテープの生産を開始
経営判断をよむ →
FY67
1967/3
売上高
112億円
当期純利益
5.7億円
FY68
1968/3
売上高
176億円
当期純利益
17.8億円
世界初の音楽用カセットテープ「SDカセット」を発表
ニューヨークのCEショウに世界初の音楽用カセットテープ「SD(Super Dynamic)カセット」を出品。1966年にフィリップスと特許契約を結び国産第1号カセットテープを生産したTDKが、自社ブランドで音楽用途に特化した製品を開発。1969年に国内発売。
FY69
1969/3
売上高
278億円
当期純利益
26.6億円
設備投資
千曲川工場を竣工・磁気テープ量産
長野県佐久市に千曲川工場を竣工し、磁気テープの本格量産を開始した。1968年のSDカセット発表に続く生産能力増強であり、1970年代の世界シェア拡大を支えた。
FY70
1970/3
売上高
311億円
当期純利益
28.5億円
FY71
1971/3
売上高
296億円
当期純利益
15.7億円
FY72
1972/3
売上高
379億円
当期純利益
25.9億円
FY73
1973/3
売上高
516億円
当期純利益
51.2億円
FY74
1974/3
売上高
560億円
当期純利益
35.5億円
米国預託証券(ADR)を発行
国際資本市場への進出。後のニューヨーク証券取引所上場(1982年)の布石。
FY75
1975/3
売上高
515億円
当期純利益
15.7億円
FY76
1976/3
売上高
829億円
当期純利益
68.1億円
FY77
1977/3
売上高
952億円
当期純利益
91.5億円
重要事項
VHS用ビデオテープの大増産
歴史的意義yutaka sugiura
大歳専務は生産能力の裏付けなく5万巻の受注を決断した。通常のリスク管理からすれば無謀な判断である。しかし、この即断を可能にしたのは、大歳自身が初代テープ事業部長として現場の能力を知悉していたこと、素野社長がビデオをポスト・カラーテレビの本命と読んでいたこと、そして「責任はオレがとる」という一言で現場が動く組織文化が既に存在していたことの3点である。数字に基づく合理的判断ではなく、現場感覚と経営者の市場観と組織の信頼関係が重なった瞬間に、TDKの90年史で最大の成長機会が生まれた。
FY78
1978/3
売上高
1,156億円
当期純利益
112億円
設備投資
成田工場を竣工・希土類磁石生産
千葉県成田市に成田工場を竣工し、希土類磁石の生産を開始した。受動部品から磁石・記録ヘッドへと製品ポートフォリオを広げる動きの一環となった。
FY79
1979/3
売上高
1,442億円
当期純利益
142億円
売上高営業利益率20.1%を記録
過去最高水準の収益性。1970年代後半から1982年にかけて営業利益率19%前後を維持し、超高収益体質を実現した。
FY80
1980/3
売上高
1,882億円
当期純利益
189億円
FY81
1981/3
売上高
2,313億円
当期純利益
223億円
磁気テープで世界シェア31.5%、首位を獲得
オーディオテープとビデオテープを合わせた生産金額ベースで世界首位。市場規模4,170億円。ソニー21.5%、日立マクセル18.0%を大きく引き離した。
FY82
1982/3
売上高
2,607億円
当期純利益
248億円
重要事項
ニューヨーク証券取引所に上場
日本企業として8番目のNYSE上場。1983年にはロンドン証券取引所にも上場。
経営判断をよむ →
FY83
1983/3
売上高
3,099億円
当期純利益
254億円
設備投資
甲府南工場を竣工・磁気ヘッド生産
山梨県甲西町に甲府南工場を竣工し、磁気ヘッドの生産を開始した。1986年のSAE Magnetics買収につながる磁気ヘッド事業の国内基盤を整えた拠点となった。
社名を「ティーディーケイ株式会社」に変更
旧社名「東京電気化学工業株式会社」から変更。ブランドの世界統一を図った。
株式上場
ロンドン証券取引所に上場
ロンドン証券取引所に上場した。1982年のNYSE上場と合わせ、TDKは日米欧三市場で株式が取引される国際企業としての体裁を整えた。
FY84
1984/3
売上高
3,652億円
当期純利益
301億円
国内初の「完全無担保普通社債」を発行
当時の日本では社債発行には銀行の担保保証が一般的だったが、TDKの財務体質の良さが認められ、国内初の完全無担保普通社債の発行が実現した。
FY85
1985/3
香港のSAE Magneticsを買収、HDD用ヘッド事業に参入
香港のHDD用磁気ヘッド製造会社SAE Magnetics (H.K.) Ltd.を買収。テープ市場の成熟化を見据えた先手の事業転換であり、磁性技術をHDD用ヘッドに応用する戦略的M&A。
FY87
1987/3
FY92
1992/3
売上高
5,348億円
当期純利益
215億円
FY93
1993/3
売上高
5,263億円
当期純利益
183億円
FY94
1994/3
売上高
4,573億円
当期純利益
54.8億円
FY95
1995/3
売上高
4,851億円
当期純利益
130億円
FY96
1996/3
売上高
5,414億円
当期純利益
276億円
重要事項事業売却
上釜健宏
黒字子会社を売却し、磁気ヘッドに集中投資
歴史的意義yutaka sugiura
日本企業にとって黒字子会社の売却は心理的障壁が高い。佐藤博が売却を決断できたのは、1年前に「重点分野への集中」を経営戦略として明文化していたからである。戦略を先に言語化し、その戦略に照らして個別案件の是非を判断するという順序が、感情的な抵抗を抑えた。さらに、売却先のテキサス・インスツルメンツに移る日本人従業員に対し、4年後にTDKへ復帰できる条項を契約に盛り込むなど、人材面の配慮も設計に組み込んだ。事業売却を「撤退」ではなく「資源の再配分」として設計した点にこそ、この判断の構造的な示唆がある。
FY97
1997/3
売上高
6,206億円
当期純利益
602億円
上釜健宏
FY98
1998/3
売上高
6,966億円
当期純利益
583億円
上釜健宏
FY99
1999/3
売上高
6,762億円
当期純利益
460億円
企業買収
上釜健宏
米Headway Technologiesを買収
米国の磁気ヘッド製造会社Headway Technologies, Inc.を買収した。1986年のSAE Magnetics買収と合わせ、HDD用磁気ヘッド事業のグローバル供給体制を強化した。
FY00
2000/3
売上高
6,744億円
当期純利益
507億円
上釜健宏
FY01
2001/3
売上高
6,899億円
当期純利益
439億円
上釜健宏
上場来初の営業赤字に転落
ITバブル崩壊と中国の台頭により、営業赤字437億円に転落。構造改革費用360億円を計上し、853名を人員削減。澤部肇社長が「売上が伸びなくても利益が出る体質」への転換を推進。
FY02
2002/3
売上高
5,642億円
当期純利益
-257億円
上釜健宏
FY03
2003/3
売上高
6,048億円
当期純利益
120億円
上釜健宏
FY04
2004/3
売上高
6,557億円
当期純利益
421億円
上釜健宏
FY05
2005/3
売上高
6,578億円
当期純利益
333億円
重要事項企業買収
上釜健宏
リチウムイオン電池メーカーATLを買収
歴史的意義yutaka sugiura
ATL買収のリターンは結果として巨大だが、2005年時点のTDKがスマートフォン市場の爆発的成長を正確に予測していたわけではない。むしろ注目すべきは、約87億円という「失敗しても致命傷にならない」規模で電池市場に橋頭堡を築いたこと自体の設計である。8年前のSilicon Systems売却が632億円であったことと対比すると、TDKは「捨てるときは大きく、買うときは小さく」という非対称な資源配分を実行していたことになる。この非対称性が、仮にATLが不調に終わっても次の打ち手を残す余地を確保していた。
FY06
2006/3
売上高
7,951億円
当期純利益
441億円
企業買収
Invensysから電源事業ラムダパワーを買収
Invensys plcから電源事業ラムダパワーグループを買収した。電源・パワーマネジメント領域に本格参入し、2008年のデンセイ・ラムダ完全子会社化につながる流れを形成した。
上釜健宏
FY07
2007/3
売上高
8,620億円
当期純利益
701億円
事業売却
上釜健宏
TDKブランド記録メディア事業の売却と磁気テープ生産撤退
歴史的意義yutaka sugiura
TDKは2007年に販売事業を売却し、2013年に生産から撤退するという6年間の段階的プロセスで記録メディアから撤退した。ブランドの使用権は買収先に残すことで消費者への影響を最小化し、自社は事業リソースをATLやEPCOSに集中させた。「一気に切る」のではなく「段階的に切り離す」という撤退設計は、看板事業を捨てる際の社内の心理的抵抗を和らげる効果もあったと推定される。創業以来の事業を手放す決断は、数字の合理性だけでなく、組織が受け入れられる速度の設計が伴って初めて実行可能になる。
FY08
2008/3
売上高
8,662億円
当期純利益
714億円
上釜健宏
ドイツの電子部品メーカーEPCOSを買収
約1,700億円でEPCOS AGを買収。TDK過去最大の買収。携帯電話向け高周波部品(SAWフィルター等)の事業基盤を獲得し、受動部品事業を大幅に強化した。
FY09
2009/3
売上高
7,274億円
当社株主に帰属する当期純利益
-631億円
組織再編
上釜健宏
TDK-EPCを設立し電子部品事業を集約
会社分割によりTDK-EPC株式会社を設立した。EPCOS買収後の電子部品事業の運営体制を整え、グローバルな製品ライン統合を進めるための組織枠組みを整えた。2020年7月にTDK本体へ吸収合併された。
FY10
2010/3
売上高
8,088億円
当社株主に帰属する当期純利益
135億円
上釜健宏
FY11
2011/3
売上高
8,719億円
当社株主に帰属する当期純利益
452億円
上釜健宏
FY12
2012/3
売上高
8,025億円
親会社株主に帰属する当期純利益
-24億円
上釜健宏
FY13
2013/3
売上高
8,418億円
親会社株主に帰属する当期純利益
11億円
上釜健宏
磁気テープ事業からの撤退を発表
2014年3月に子会社メディアテックを清算し、磁気テープの生産から完全撤退。1953年の製品第1号発売から60年の歴史に幕を下ろした。
FY14
2014/3
売上高
9,845億円
親会社株主に帰属する当期純利益
162億円
石黒成直
FY15
2015/3
売上高
10,825億円
親会社株主に帰属する当期純利益
494億円
石黒成直
FY16
2016/3
売上高
11,522億円
親会社株主に帰属する当期純利益
648億円
業務提携
石黒成直
Qualcommと合弁RF360で高周波部品移管
Qualcomm Incorporatedとの合弁会社RF360 Holdings Singapore PTE.Ltd.へ高周波部品事業の事業移管を完了した。EPCOS由来の高周波部品事業を切り出して合弁化し、その後2019年9月に持分を売却した。
FY17
2017/3
売上高
11,782億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,450億円
石黒成直
米国InvenSenseを約1,427億円で買収
MEMS(微小電気機械システム)センサメーカーを買収し、センサ事業を強化。2016年のMicronas買収(磁気センサ)と合わせ、センサ応用製品事業の基盤を構築した。
FY18
2018/3
売上高
12,717億円
親会社株主に帰属する当期純利益
634億円
石黒成直
FY19
2019/3
売上高
13,818億円
親会社株主に帰属する当期純利益
822億円
石黒成直
FY20
2020/3
売上高
13,630億円
親会社株主に帰属する当期純利益
577億円
齋藤昇
FY21
2021/3
売上高
14,790億円
親会社株主に帰属する当期純利益
746億円
齋藤昇
FY22
2022/3
売上高
19,021億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,312億円
齋藤昇
連結売上高2兆円を突破
2023年3月期の連結売上高は2兆1,808億円。ATLのリチウムイオン電池事業の成長により、初の売上高2兆円超を達成。
FY23
2023/3
売上高
21,808億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,141億円
齋藤昇
FY24
2024/3
売上高
21,038億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,246億円
齋藤昇
創業90周年、売上高2兆2,048億円
2025年3月期の連結売上高は2兆2,048億円、営業利益2,242億円(営業利益率10.2%)。フェライトの工業化から始まった企業は、エナジー応用製品が売上の過半を占める電子部品メーカーに変貌した。
FY25
2025/3
売上高
22,048億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,671億円
FY26
2026/3
売上高
25,048億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,957億円
  1. 世界初の酸化物磁性体「フェライト」の発明

    東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が世界初の酸化物磁性体「フェライト」を発明。1932年に特許を取得。TDK創業の原点となった基礎研究。

  2. フェライト工業化の決断
    齋藤憲三は「2勝98敗」を自認する連続起業家であり、加藤博士は「欧米の模倣ではない日本独自の工業」を志す研究者であった。両者の出会いは偶然だが、フェライトの工業化に踏み切れたのは、鐘淵紡績の津田信吾社長が私財10万円を提供したからである。会社の資金ではなく個人の財産を投じたという事実は、当時のフェライト事業が合理的な投資判断の範囲外にあったことを示唆する。大学の基礎研究を工業化するディープテック型の起業が、志と人脈と個人資産の組み合わせによって実現した構造は、90年後の現在から見ても示唆に富む。
  3. フェライトコアの製品化に世界で初めて成功

    TDKは世界に先駆けてフェライトコアを製品化し、日本の無線通信機やラジオに採用された。蒲田工場を新設し、本格的な量産を開始。

  4. 設備投資
    蒲田工場を新設

    創業翌々年に東京・蒲田工場を新設し、フェライトコアの量産体制を整備した。世界初の酸化物磁性体の本格的な工業化に踏み出した拠点となった。

  5. GHQがスーパーヘテロダイン令を交付

    GHQが雑音の少ないスーパーヘテロダイン方式のラジオ生産のみを認める通達を交付。この方式には中間周波トランスが必要で、部品としてフェライトコアが不可欠であった。TDKはラジオ部品メーカーとして戦後の急成長を遂げる。

  6. セラミックコンデンサーの生産開始

    フェライトの焼成技術を応用し、セラミックコンデンサーの生産を開始。現在の受動部品事業(売上構成比25.4%)の起点となった。

  7. 設備投資
    清水工場を開設・磁気テープ生産開始

    東京・清水工場を開設し、磁気録音テープの生産を開始した。1953年の製品第1号発売へつながる量産設備の整備にあたり、後の磁気テープ世界首位の出発点となった。

  8. 磁気テープ製品第1号を発売

    1951年に開発に着手した磁気テープの最初の製品を発売。保磁力は不十分だったが、磁気テープ事業の出発点となった。

  9. NHKの放送用テープとして認定

    磁気テープの品質向上に注力した結果、NHKの放送用テープとして認定され、200巻を受注。品質の公的認定を得た。

  10. 組織再編
    事業部制組織形態を採用

    事業部制組織形態を採用した。フェライト・磁気テープ・コンデンサと多角化が進んだ製品群を効率的に運営するための社内体制を整えた。

  11. 東京証券取引所に株式上場
  12. 米国ニューヨークに現地法人を設立

    TDK Electronics Corporationを設立。海外拠点展開の起点。

  13. 世界初の音楽用カセットテープ「SDカセット」を発表

    ニューヨークのCEショウに世界初の音楽用カセットテープ「SD(Super Dynamic)カセット」を出品。1966年にフィリップスと特許契約を結び国産第1号カセットテープを生産したTDKが、自社ブランドで音楽用途に特化した製品を開発。1969年に国内発売。

  14. 設備投資
    千曲川工場を竣工・磁気テープ量産

    長野県佐久市に千曲川工場を竣工し、磁気テープの本格量産を開始した。1968年のSDカセット発表に続く生産能力増強であり、1970年代の世界シェア拡大を支えた。

  15. 米国預託証券(ADR)を発行

    国際資本市場への進出。後のニューヨーク証券取引所上場(1982年)の布石。

  16. VHS用ビデオテープの大増産
    大歳専務は生産能力の裏付けなく5万巻の受注を決断した。通常のリスク管理からすれば無謀な判断である。しかし、この即断を可能にしたのは、大歳自身が初代テープ事業部長として現場の能力を知悉していたこと、素野社長がビデオをポスト・カラーテレビの本命と読んでいたこと、そして「責任はオレがとる」という一言で現場が動く組織文化が既に存在していたことの3点である。数字に基づく合理的判断ではなく、現場感覚と経営者の市場観と組織の信頼関係が重なった瞬間に、TDKの90年史で最大の成長機会が生まれた。
  17. 設備投資
    成田工場を竣工・希土類磁石生産

    千葉県成田市に成田工場を竣工し、希土類磁石の生産を開始した。受動部品から磁石・記録ヘッドへと製品ポートフォリオを広げる動きの一環となった。

  18. 売上高営業利益率20.1%を記録

    過去最高水準の収益性。1970年代後半から1982年にかけて営業利益率19%前後を維持し、超高収益体質を実現した。

  19. 磁気テープで世界シェア31.5%、首位を獲得

    オーディオテープとビデオテープを合わせた生産金額ベースで世界首位。市場規模4,170億円。ソニー21.5%、日立マクセル18.0%を大きく引き離した。

  20. 設備投資
    甲府南工場を竣工・磁気ヘッド生産

    山梨県甲西町に甲府南工場を竣工し、磁気ヘッドの生産を開始した。1986年のSAE Magnetics買収につながる磁気ヘッド事業の国内基盤を整えた拠点となった。

  21. 社名を「ティーディーケイ株式会社」に変更

    旧社名「東京電気化学工業株式会社」から変更。ブランドの世界統一を図った。

  22. 株式上場
    ロンドン証券取引所に上場

    ロンドン証券取引所に上場した。1982年のNYSE上場と合わせ、TDKは日米欧三市場で株式が取引される国際企業としての体裁を整えた。

  23. 国内初の「完全無担保普通社債」を発行

    当時の日本では社債発行には銀行の担保保証が一般的だったが、TDKの財務体質の良さが認められ、国内初の完全無担保普通社債の発行が実現した。

  24. 香港のSAE Magneticsを買収、HDD用ヘッド事業に参入

    香港のHDD用磁気ヘッド製造会社SAE Magnetics (H.K.) Ltd.を買収。テープ市場の成熟化を見据えた先手の事業転換であり、磁性技術をHDD用ヘッドに応用する戦略的M&A。

  25. 事業売却
    黒字子会社を売却し、磁気ヘッドに集中投資
    日本企業にとって黒字子会社の売却は心理的障壁が高い。佐藤博が売却を決断できたのは、1年前に「重点分野への集中」を経営戦略として明文化していたからである。戦略を先に言語化し、その戦略に照らして個別案件の是非を判断するという順序が、感情的な抵抗を抑えた。さらに、売却先のテキサス・インスツルメンツに移る日本人従業員に対し、4年後にTDKへ復帰できる条項を契約に盛り込むなど、人材面の配慮も設計に組み込んだ。事業売却を「撤退」ではなく「資源の再配分」として設計した点にこそ、この判断の構造的な示唆がある。
  26. 企業買収
    米Headway Technologiesを買収

    米国の磁気ヘッド製造会社Headway Technologies, Inc.を買収した。1986年のSAE Magnetics買収と合わせ、HDD用磁気ヘッド事業のグローバル供給体制を強化した。

  27. 上場来初の営業赤字に転落

    ITバブル崩壊と中国の台頭により、営業赤字437億円に転落。構造改革費用360億円を計上し、853名を人員削減。澤部肇社長が「売上が伸びなくても利益が出る体質」への転換を推進。

  28. 企業買収
    リチウムイオン電池メーカーATLを買収
    ATL買収のリターンは結果として巨大だが、2005年時点のTDKがスマートフォン市場の爆発的成長を正確に予測していたわけではない。むしろ注目すべきは、約87億円という「失敗しても致命傷にならない」規模で電池市場に橋頭堡を築いたこと自体の設計である。8年前のSilicon Systems売却が632億円であったことと対比すると、TDKは「捨てるときは大きく、買うときは小さく」という非対称な資源配分を実行していたことになる。この非対称性が、仮にATLが不調に終わっても次の打ち手を残す余地を確保していた。
  29. 企業買収
    Invensysから電源事業ラムダパワーを買収

    Invensys plcから電源事業ラムダパワーグループを買収した。電源・パワーマネジメント領域に本格参入し、2008年のデンセイ・ラムダ完全子会社化につながる流れを形成した。

  30. 事業売却
    TDKブランド記録メディア事業の売却と磁気テープ生産撤退
    TDKは2007年に販売事業を売却し、2013年に生産から撤退するという6年間の段階的プロセスで記録メディアから撤退した。ブランドの使用権は買収先に残すことで消費者への影響を最小化し、自社は事業リソースをATLやEPCOSに集中させた。「一気に切る」のではなく「段階的に切り離す」という撤退設計は、看板事業を捨てる際の社内の心理的抵抗を和らげる効果もあったと推定される。創業以来の事業を手放す決断は、数字の合理性だけでなく、組織が受け入れられる速度の設計が伴って初めて実行可能になる。
  31. ドイツの電子部品メーカーEPCOSを買収

    約1,700億円でEPCOS AGを買収。TDK過去最大の買収。携帯電話向け高周波部品(SAWフィルター等)の事業基盤を獲得し、受動部品事業を大幅に強化した。

  32. 組織再編
    TDK-EPCを設立し電子部品事業を集約

    会社分割によりTDK-EPC株式会社を設立した。EPCOS買収後の電子部品事業の運営体制を整え、グローバルな製品ライン統合を進めるための組織枠組みを整えた。2020年7月にTDK本体へ吸収合併された。

  33. 磁気テープ事業からの撤退を発表

    2014年3月に子会社メディアテックを清算し、磁気テープの生産から完全撤退。1953年の製品第1号発売から60年の歴史に幕を下ろした。

  34. 業務提携
    Qualcommと合弁RF360で高周波部品移管

    Qualcomm Incorporatedとの合弁会社RF360 Holdings Singapore PTE.Ltd.へ高周波部品事業の事業移管を完了した。EPCOS由来の高周波部品事業を切り出して合弁化し、その後2019年9月に持分を売却した。

  35. 米国InvenSenseを約1,427億円で買収

    MEMS(微小電気機械システム)センサメーカーを買収し、センサ事業を強化。2016年のMicronas買収(磁気センサ)と合わせ、センサ応用製品事業の基盤を構築した。

  36. 連結売上高2兆円を突破

    2023年3月期の連結売上高は2兆1,808億円。ATLのリチウムイオン電池事業の成長により、初の売上高2兆円超を達成。

  37. 創業90周年、売上高2兆2,048億円

    2025年3月期の連結売上高は2兆2,048億円、営業利益2,242億円(営業利益率10.2%)。フェライトの工業化から始まった企業は、エナジー応用製品が売上の過半を占める電子部品メーカーに変貌した。