TDKの沿革・歴史的証言

/

1930年〜2025

TDKの1930年〜2025年の主要な出来事・経営判断・組織変化を年月順に並べた沿革(社史年表)と、経営者・当事者の歴史的証言

年度売上高純利益年月区分出来事歴史的意義
1930
1-12月
世界初の酸化物磁性体「フェライト」の発明
東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が世界初の酸化物磁性体「フェライト」を発明。1932年に特許を取得。TDK創業の原点となった基礎研究。
1935
1-12月
フェライト工業化の決断
「98敗の男」と「私財を投じた大企業社長」が組んだ創業の構造
1937
1-12月
フェライトコアの製品化に世界で初めて成功
TDKは世界に先駆けてフェライトコアを製品化し、日本の無線通信機やラジオに採用された。蒲田工場を新設し、本格的な量産を開始。
設備投資
蒲田工場を新設
創業翌々年に東京・蒲田工場を新設し、フェライトコアの量産体制を整備した。世界初の酸化物磁性体の本格的な工業化に踏み出した拠点となった。
1946
1-12月
GHQがスーパーヘテロダイン令を交付
GHQが雑音の少ないスーパーヘテロダイン方式のラジオ生産のみを認める通達を交付。この方式には中間周波トランスが必要で、部品としてフェライトコアが不可欠であった。TDKはラジオ部品メーカーとして戦後の急成長を遂げる。
1951
1-12月
セラミックコンデンサーの生産開始
フェライトの焼成技術を応用し、セラミックコンデンサーの生産を開始。現在の受動部品事業(売上構成比25.4%)の起点となった。
1952
1-12月
設備投資
清水工場を開設・磁気テープ生産開始
東京・清水工場を開設し、磁気録音テープの生産を開始した。1953年の製品第1号発売へつながる量産設備の整備にあたり、後の磁気テープ世界首位の出発点となった。
1953
1-12月
磁気テープ製品第1号を発売
1951年に開発に着手した磁気テープの最初の製品を発売。保磁力は不十分だったが、磁気テープ事業の出発点となった。
1957
1-12月
NHKの放送用テープとして認定
磁気テープの品質向上に注力した結果、NHKの放送用テープとして認定され、200巻を受注。品質の公的認定を得た。
FY60
1960/3
売上高
14.7億円
当期純利益
1.48億円
FY62
1962/3
組織再編
事業部制組織形態を採用
事業部制組織形態を採用した。フェライト・磁気テープ・コンデンサと多角化が進んだ製品群を効率的に運営するための社内体制を整えた。
東京証券取引所に株式上場
FY63
1963/3
売上高
43億円
当期純利益
2.53億円
FY64
1964/3
売上高
55.7億円
当期純利益
2.43億円
FY65
1965/3
売上高
58.3億円
当期純利益
2.9億円
FY66
1966/3
売上高
93.3億円
当期純利益
4.5億円
米国ニューヨークに現地法人を設立
TDK Electronics Corporationを設立。海外拠点展開の起点。
FY67
1967/3
売上高
112億円
当期純利益
5.7億円
FY68
1968/3
売上高
176億円
当期純利益
17.8億円
FY69
1969/3
売上高
278億円
当期純利益
26.6億円
世界初の音楽用カセットテープ「SDカセット」を発表
ニューヨークのCEショウに世界初の音楽用カセットテープ「SD(Super Dynamic)カセット」を出品。1966年にフィリップスと特許契約を結び国産第1号カセットテープを生産したTDKが、自社ブランドで音楽用途に特化した製品を開発。1969年に国内発売。
FY70
1970/3
売上高
311億円
当期純利益
28.5億円
設備投資
千曲川工場を竣工・磁気テープ量産
長野県佐久市に千曲川工場を竣工し、磁気テープの本格量産を開始した。1968年のSDカセット発表に続く生産能力増強であり、1970年代の世界シェア拡大を支えた。
FY71
1971/3
売上高
296億円
当期純利益
15.7億円
FY72
1972/3
売上高
379億円
当期純利益
25.9億円
FY73
1973/3
売上高
516億円
当期純利益
51.2億円
FY74
1974/3
売上高
560億円
当期純利益
35.5億円
FY75
1975/3
売上高
515億円
当期純利益
15.7億円
米国預託証券(ADR)を発行
国際資本市場への進出。後のニューヨーク証券取引所上場(1982年)の布石。
FY76
1976/3
売上高
829億円
当期純利益
68.1億円
FY77
1977/3
売上高
952億円
当期純利益
91.5億円
FY78
1978/3
売上高
1,156億円
当期純利益
112億円
VHS用ビデオテープの大増産
月産3,000巻の会社が5万巻を即受注した「逆算なき決断」
FY79
1979/3
売上高
1,442億円
当期純利益
142億円
設備投資
成田工場を竣工・希土類磁石生産
千葉県成田市に成田工場を竣工し、希土類磁石の生産を開始した。受動部品から磁石・記録ヘッドへと製品ポートフォリオを広げる動きの一環となった。
FY80
1980/3
売上高
1,882億円
当期純利益
189億円
売上高営業利益率20.1%を記録
過去最高水準の収益性。1970年代後半から1982年にかけて営業利益率19%前後を維持し、超高収益体質を実現した。
FY81
1981/3
売上高
2,313億円
当期純利益
223億円
FY82
1982/3
売上高
2,607億円
当期純利益
248億円
磁気テープで世界シェア31.5%、首位を獲得
オーディオテープとビデオテープを合わせた生産金額ベースで世界首位。市場規模4,170億円。ソニー21.5%、日立マクセル18.0%を大きく引き離した。
FY83
1983/3
売上高
3,099億円
当期純利益
254億円
ニューヨーク証券取引所に上場
日本企業として8番目のNYSE上場。1983年にはロンドン証券取引所にも上場。
設備投資
甲府南工場を竣工・磁気ヘッド生産
山梨県甲西町に甲府南工場を竣工し、磁気ヘッドの生産を開始した。1986年のSAE Magnetics買収につながる磁気ヘッド事業の国内基盤を整えた拠点となった。
社名を「ティーディーケイ株式会社」に変更
旧社名「東京電気化学工業株式会社」から変更。ブランドの世界統一を図った。
FY84
1984/3
売上高
3,652億円
当期純利益
301億円
株式上場
ロンドン証券取引所に上場
ロンドン証券取引所に上場した。1982年のNYSE上場と合わせ、TDKは日米欧三市場で株式が取引される国際企業としての体裁を整えた。
FY85
1985/3
国内初の「完全無担保普通社債」を発行
当時の日本では社債発行には銀行の担保保証が一般的だったが、TDKの財務体質の良さが認められ、国内初の完全無担保普通社債の発行が実現した。
FY87
1987/3
香港のSAE Magneticsを買収、HDD用ヘッド事業に参入
香港のHDD用磁気ヘッド製造会社SAE Magnetics (H.K.) Ltd.を買収。テープ市場の成熟化を見据えた先手の事業転換であり、磁性技術をHDD用ヘッドに応用する戦略的M&A。
FY92
1992/3
売上高
5,348億円
当期純利益
215億円
FY93
1993/3
売上高
5,263億円
当期純利益
183億円
FY94
1994/3
売上高
4,573億円
当期純利益
54.8億円
FY95
1995/3
売上高
4,851億円
当期純利益
130億円
FY96
1996/3
売上高
5,414億円
当期純利益
276億円
FY97
1997/3
売上高
6,206億円
当期純利益
602億円
事業売却
黒字子会社を売却し、磁気ヘッドに集中投資
「黒字だから持ち続ける」を否定した事業売却の設計思想
FY98
1998/3
売上高
6,966億円
当期純利益
583億円
FY99
1999/3
売上高
6,762億円
当期純利益
460億円
FY00
2000/3
売上高
6,744億円
当期純利益
507億円
企業買収
米Headway Technologiesを買収
米国の磁気ヘッド製造会社Headway Technologies, Inc.を買収した。1986年のSAE Magnetics買収と合わせ、HDD用磁気ヘッド事業のグローバル供給体制を強化した。
FY01
2001/3
売上高
6,899億円
当期純利益
439億円
FY02
2002/3
売上高
5,642億円
当期純利益
-257億円
上場来初の営業赤字に転落
ITバブル崩壊と中国の台頭により、営業赤字437億円に転落。構造改革費用360億円を計上し、853名を人員削減。澤部肇社長が「売上が伸びなくても利益が出る体質」への転換を推進。
FY03
2003/3
売上高
6,048億円
当期純利益
120億円
FY04
2004/3
売上高
6,557億円
当期純利益
421億円
FY05
2005/3
売上高
6,578億円
当期純利益
333億円
FY06
2006/3
売上高
7,951億円
当期純利益
441億円
企業買収
リチウムイオン電池メーカーATLを買収
約87億円が1兆円を生んだ背景にある「小さく入って大きく育てる」M&Aの設計
企業買収
Invensysから電源事業ラムダパワーを買収
Invensys plcから電源事業ラムダパワーグループを買収した。電源・パワーマネジメント領域に本格参入し、2008年のデンセイ・ラムダ完全子会社化につながる流れを形成した。
FY07
2007/3
売上高
8,620億円
当期純利益
701億円
FY08
2008/3
売上高
8,662億円
当期純利益
714億円
事業売却
TDKブランド記録メディア事業の売却と磁気テープ生産撤退
世界一のブランドを「段階的に手放す」撤退設計
FY09
2009/3
売上高
7,274億円
当社株主に帰属する当期純利益
-631億円
ドイツの電子部品メーカーEPCOSを買収
約1,700億円でEPCOS AGを買収。TDK過去最大の買収。携帯電話向け高周波部品(SAWフィルター等)の事業基盤を獲得し、受動部品事業を大幅に強化した。
FY10
2010/3
売上高
8,088億円
当社株主に帰属する当期純利益
135億円
組織再編
TDK-EPCを設立し電子部品事業を集約
会社分割によりTDK-EPC株式会社を設立した。EPCOS買収後の電子部品事業の運営体制を整え、グローバルな製品ライン統合を進めるための組織枠組みを整えた。2020年7月にTDK本体へ吸収合併された。
FY11
2011/3
売上高
8,719億円
当社株主に帰属する当期純利益
452億円
FY12
2012/3
売上高
8,025億円
親会社株主に帰属する当期純利益
-24億円
FY13
2013/3
売上高
8,418億円
親会社株主に帰属する当期純利益
11億円
FY14
2014/3
売上高
9,845億円
親会社株主に帰属する当期純利益
162億円
磁気テープ事業からの撤退を発表
2014年3月に子会社メディアテックを清算し、磁気テープの生産から完全撤退。1953年の製品第1号発売から60年の歴史に幕を下ろした。
FY15
2015/3
売上高
10,825億円
親会社株主に帰属する当期純利益
494億円
FY16
2016/3
売上高
11,522億円
親会社株主に帰属する当期純利益
648億円
FY17
2017/3
売上高
11,782億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,450億円
業務提携
Qualcommと合弁RF360で高周波部品移管
Qualcomm Incorporatedとの合弁会社RF360 Holdings Singapore PTE.Ltd.へ高周波部品事業の事業移管を完了した。EPCOS由来の高周波部品事業を切り出して合弁化し、その後2019年9月に持分を売却した。
FY18
2018/3
売上高
12,717億円
親会社株主に帰属する当期純利益
634億円
米国InvenSenseを約1,427億円で買収
MEMS(微小電気機械システム)センサメーカーを買収し、センサ事業を強化。2016年のMicronas買収(磁気センサ)と合わせ、センサ応用製品事業の基盤を構築した。
FY19
2019/3
売上高
13,818億円
親会社株主に帰属する当期純利益
822億円
FY20
2020/3
売上高
13,630億円
親会社株主に帰属する当期純利益
577億円
FY21
2021/3
売上高
14,790億円
親会社株主に帰属する当期純利益
746億円
FY22
2022/3
売上高
19,021億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,312億円
FY23
2023/3
売上高
21,808億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,141億円
連結売上高2兆円を突破
2023年3月期の連結売上高は2兆1,808億円。ATLのリチウムイオン電池事業の成長により、初の売上高2兆円超を達成。
FY24
2024/3
売上高
21,038億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,246億円
FY25
2025/3
売上高
22,048億円
親会社株主に帰属する当期純利益
1,671億円
創業90周年、売上高2兆2,048億円
2025年3月期の連結売上高は2兆2,048億円、営業利益2,242億円(営業利益率10.2%)。フェライトの工業化から始まった企業は、エナジー応用製品が売上の過半を占める電子部品メーカーに変貌した。
  1. 世界初の酸化物磁性体「フェライト」の発明

    東京工業大学の加藤与五郎博士と武井武博士が世界初の酸化物磁性体「フェライト」を発明。1932年に特許を取得。TDK創業の原点となった基礎研究。

  2. フェライト工業化の決断
    「98敗の男」と「私財を投じた大企業社長」が組んだ創業の構造
  3. フェライトコアの製品化に世界で初めて成功

    TDKは世界に先駆けてフェライトコアを製品化し、日本の無線通信機やラジオに採用された。蒲田工場を新設し、本格的な量産を開始。

  4. 設備投資
    蒲田工場を新設

    創業翌々年に東京・蒲田工場を新設し、フェライトコアの量産体制を整備した。世界初の酸化物磁性体の本格的な工業化に踏み出した拠点となった。

  5. GHQがスーパーヘテロダイン令を交付

    GHQが雑音の少ないスーパーヘテロダイン方式のラジオ生産のみを認める通達を交付。この方式には中間周波トランスが必要で、部品としてフェライトコアが不可欠であった。TDKはラジオ部品メーカーとして戦後の急成長を遂げる。

  6. セラミックコンデンサーの生産開始

    フェライトの焼成技術を応用し、セラミックコンデンサーの生産を開始。現在の受動部品事業(売上構成比25.4%)の起点となった。

  7. 設備投資
    清水工場を開設・磁気テープ生産開始

    東京・清水工場を開設し、磁気録音テープの生産を開始した。1953年の製品第1号発売へつながる量産設備の整備にあたり、後の磁気テープ世界首位の出発点となった。

  8. 磁気テープ製品第1号を発売

    1951年に開発に着手した磁気テープの最初の製品を発売。保磁力は不十分だったが、磁気テープ事業の出発点となった。

  9. NHKの放送用テープとして認定

    磁気テープの品質向上に注力した結果、NHKの放送用テープとして認定され、200巻を受注。品質の公的認定を得た。

  10. 組織再編
    事業部制組織形態を採用

    事業部制組織形態を採用した。フェライト・磁気テープ・コンデンサと多角化が進んだ製品群を効率的に運営するための社内体制を整えた。

  11. 東京証券取引所に株式上場
  12. 米国ニューヨークに現地法人を設立

    TDK Electronics Corporationを設立。海外拠点展開の起点。

  13. 世界初の音楽用カセットテープ「SDカセット」を発表

    ニューヨークのCEショウに世界初の音楽用カセットテープ「SD(Super Dynamic)カセット」を出品。1966年にフィリップスと特許契約を結び国産第1号カセットテープを生産したTDKが、自社ブランドで音楽用途に特化した製品を開発。1969年に国内発売。

  14. 設備投資
    千曲川工場を竣工・磁気テープ量産

    長野県佐久市に千曲川工場を竣工し、磁気テープの本格量産を開始した。1968年のSDカセット発表に続く生産能力増強であり、1970年代の世界シェア拡大を支えた。

  15. 米国預託証券(ADR)を発行

    国際資本市場への進出。後のニューヨーク証券取引所上場(1982年)の布石。

  16. VHS用ビデオテープの大増産
    月産3,000巻の会社が5万巻を即受注した「逆算なき決断」
  17. 設備投資
    成田工場を竣工・希土類磁石生産

    千葉県成田市に成田工場を竣工し、希土類磁石の生産を開始した。受動部品から磁石・記録ヘッドへと製品ポートフォリオを広げる動きの一環となった。

  18. 売上高営業利益率20.1%を記録

    過去最高水準の収益性。1970年代後半から1982年にかけて営業利益率19%前後を維持し、超高収益体質を実現した。

  19. 磁気テープで世界シェア31.5%、首位を獲得

    オーディオテープとビデオテープを合わせた生産金額ベースで世界首位。市場規模4,170億円。ソニー21.5%、日立マクセル18.0%を大きく引き離した。

  20. ニューヨーク証券取引所に上場

    日本企業として8番目のNYSE上場。1983年にはロンドン証券取引所にも上場。

  21. 設備投資
    甲府南工場を竣工・磁気ヘッド生産

    山梨県甲西町に甲府南工場を竣工し、磁気ヘッドの生産を開始した。1986年のSAE Magnetics買収につながる磁気ヘッド事業の国内基盤を整えた拠点となった。

  22. 社名を「ティーディーケイ株式会社」に変更

    旧社名「東京電気化学工業株式会社」から変更。ブランドの世界統一を図った。

  23. 株式上場
    ロンドン証券取引所に上場

    ロンドン証券取引所に上場した。1982年のNYSE上場と合わせ、TDKは日米欧三市場で株式が取引される国際企業としての体裁を整えた。

  24. 国内初の「完全無担保普通社債」を発行

    当時の日本では社債発行には銀行の担保保証が一般的だったが、TDKの財務体質の良さが認められ、国内初の完全無担保普通社債の発行が実現した。

  25. 香港のSAE Magneticsを買収、HDD用ヘッド事業に参入

    香港のHDD用磁気ヘッド製造会社SAE Magnetics (H.K.) Ltd.を買収。テープ市場の成熟化を見据えた先手の事業転換であり、磁性技術をHDD用ヘッドに応用する戦略的M&A。

  26. 事業売却
    黒字子会社を売却し、磁気ヘッドに集中投資
    「黒字だから持ち続ける」を否定した事業売却の設計思想
  27. 企業買収
    米Headway Technologiesを買収

    米国の磁気ヘッド製造会社Headway Technologies, Inc.を買収した。1986年のSAE Magnetics買収と合わせ、HDD用磁気ヘッド事業のグローバル供給体制を強化した。

  28. 上場来初の営業赤字に転落

    ITバブル崩壊と中国の台頭により、営業赤字437億円に転落。構造改革費用360億円を計上し、853名を人員削減。澤部肇社長が「売上が伸びなくても利益が出る体質」への転換を推進。

  29. 企業買収
    リチウムイオン電池メーカーATLを買収
    約87億円が1兆円を生んだ背景にある「小さく入って大きく育てる」M&Aの設計
  30. 企業買収
    Invensysから電源事業ラムダパワーを買収

    Invensys plcから電源事業ラムダパワーグループを買収した。電源・パワーマネジメント領域に本格参入し、2008年のデンセイ・ラムダ完全子会社化につながる流れを形成した。

  31. 事業売却
    TDKブランド記録メディア事業の売却と磁気テープ生産撤退
    世界一のブランドを「段階的に手放す」撤退設計
  32. ドイツの電子部品メーカーEPCOSを買収

    約1,700億円でEPCOS AGを買収。TDK過去最大の買収。携帯電話向け高周波部品(SAWフィルター等)の事業基盤を獲得し、受動部品事業を大幅に強化した。

  33. 組織再編
    TDK-EPCを設立し電子部品事業を集約

    会社分割によりTDK-EPC株式会社を設立した。EPCOS買収後の電子部品事業の運営体制を整え、グローバルな製品ライン統合を進めるための組織枠組みを整えた。2020年7月にTDK本体へ吸収合併された。

  34. 磁気テープ事業からの撤退を発表

    2014年3月に子会社メディアテックを清算し、磁気テープの生産から完全撤退。1953年の製品第1号発売から60年の歴史に幕を下ろした。

  35. 業務提携
    Qualcommと合弁RF360で高周波部品移管

    Qualcomm Incorporatedとの合弁会社RF360 Holdings Singapore PTE.Ltd.へ高周波部品事業の事業移管を完了した。EPCOS由来の高周波部品事業を切り出して合弁化し、その後2019年9月に持分を売却した。

  36. 米国InvenSenseを約1,427億円で買収

    MEMS(微小電気機械システム)センサメーカーを買収し、センサ事業を強化。2016年のMicronas買収(磁気センサ)と合わせ、センサ応用製品事業の基盤を構築した。

  37. 連結売上高2兆円を突破

    2023年3月期の連結売上高は2兆1,808億円。ATLのリチウムイオン電池事業の成長により、初の売上高2兆円超を達成。

  38. 創業90周年、売上高2兆2,048億円

    2025年3月期の連結売上高は2兆2,048億円、営業利益2,242億円(営業利益率10.2%)。フェライトの工業化から始まった企業は、エナジー応用製品が売上の過半を占める電子部品メーカーに変貌した。

歴史的証言

山崎貞一
この偉大なる発明品もさっぱり売れない。電気通信業界の技術者がなかなか相手にしてくれないのである。どうもメーカーの技術者は頭が悪いし、こんなに良いものが判らないのかということで、自分たちの手でフェライトコアーの応用製品を手がけることを考えた。(中略)自転車の発電ランプも手がけた。形状的にはいまの発電ランプと同じようなものであり、中にコバルトフェライトの磁石を使って発電する方式であった。
山崎貞一
これも乾電池の自転車灯に敗れた。価格である。現在、ほとんどの自転車には発電ランプがつけられて、三洋電機がこのランプ一つで会社を創業したことを思うと、新しい商品というものも、その時期がいかに重要であるかを、しみじみ感ずるのである。日本はもとより、世界最初の商品であったと思う。発明に早すぎるということはないはずであるが、この2つに関する限り、早すぎたのである。
山崎貞一
1940年、フェライトコアーは松下電器によって初めて採用された。ミューチューニングの方式として、ようやく社会に認められ始めたのである。
山崎貞一
(戦時中に)フェライトの技術的な進歩については、この期間に外国と大きな差のついたことは事実である。また、ポツダム宣言受託により、特許権の戦勝国優先権主張が認められて、戦後、テレビ用のフェライトコアーについては、フィリップス社と特許契約を結ばねばならなくなっていたのである。日本で発明されながら、その応用面での開発が遅れ、逆に外国に特許を支払わなければならないという運命の皮肉を、この時ほど残念に思ったことはない。
山崎貞一
と同時に、優秀な発明品であっても、それを工業化し、さらに高度にものに発展させていく努力は、並大抵のものではなしえられないということを痛感した次第である。戦後の混乱期にはフェライトコアーの需要も全く止まってしまった。細々と会社を維持していくにも、何か別のものをするしかなく、農地の開墾や製塩などを行った。
山崎貞一
しかし、1947年の中頃からようやく復興の兆候が見え始め、1948年の1月に私は、前社長からバトンを受けて社長に就任したのであった。東京電気化学工業27年あまりの歴史の中にあって、この時期までは、開発と混乱の繰り返しであり、私が社長に就任してからの会社は、事実上第二の出発をしたのだと考えている。
山崎貞一
最近IC(集積回路)が出現してきたことから、当社の経営がそれに大きく影響されるのではないかと疑問をお持ちの方もおられると思いますので、その点について申し上げることにいたします。まず結論から先に申しあげて、ICの出現によっても当社はほとんど影響を受けないということであります。なぜか。
山崎貞一
まず、ICはどのような用途があるかと言いますと、主として電子計算機であります。先般RCAがICを使ったテレビを発表いたしましたので、2〜3年後にはテレビ、ラジオ、ステレオなどにも普通に使われてくると思いますが、現在のところでは電子計算機に最も多く使われております。この電子計算機はどのような装置からできているのかと申しますと、演算、記憶、入力、出力の4つとこれらをコントロールする装置であります。
山崎貞一
ここで問題にするのは演算と記憶の装置でありますが、まずICは主として演算装置に使われております。一方ICを使わない電子計算機の演算装置にはどのような部品が使われているかと言いますと、トランジスタ、ダイオード、抵抗、コンデンサなどであり、ほぼこの4つで組み合わされております。ICはこの4つの部品を集積したものというわけでありますが、このうち当社が生産している部品はコンデンサだけであります。(中略)IC化によって当社が影響を受けるのはコンデンサの部門だけであるというわけであります。
山崎貞一
では、フェライトはどこに使われているかと言いますと、それは記憶装置であります。最近ではメモリー・フェライトに変わって、メモリー・プレン、つまり薄膜のメモリー装置が出てきておりますが、先般某社が発表したICを全面的に使用していると言われる電子計算機の記憶装置にもメモリー・フェライトが使われておりますので、電子計算機がIC化されても当社はコンデンサの部門で若干の影響を受けるだけで、それほど心配するには当たらない、ということを認識していただきたいと思います。
山崎貞一
この面では当社としては、メモリー分野のフェライト、テープを大いに活用してもらうよう努力しております。
素野福次郎(TDK・社長)
「それは思い切った投資でしょ。だいたい不景気になると(投資を)やらんわね。(みんなの)反対やってきたということじゃないの」
紙面論評
戦後、特にスーパー受信機が発達し、いわゆる無線時代の波が押し寄せた。平沢工場は電子工業部門の本命とされる磁性材料フェライト生産工場
紙面論評
電子計算機の歴史に技術的な革命をもたらした
紙面論評
磁気テープが利益下支え。カラーテレビ、CBトランシーバー、オーディオの三本柱が崩れ、減額修正続出の電子部品業界。そのなかにあって、東京電気化学は異例の好業績を堅持している
素野福次郎(TDK・会長)
蒔いたタネの実はすべて刈り取ってしまった。いまから捲くタネは育ってもあまり太い幹になりそうもない

参考文献・出所

有価証券報告書
経済時代 1959/11
経済往来 1963/5
読売新聞 1965/9/7
証券アナリストジャーナル 1966/10
野田経済 1969/9/3
日経ビジネス 1977/6/6
週刊東洋経済 1977/9/10
日経ビジネス 1983/5/16
永田清寿『TDK世界一の秘密』東都書房
素野福次郎『私の履歴書:経済人24』
證券月報 第482号
TDK公式サイト
TDK統合報告書 2025
日経ビジネス「挑戦する魂を鍛え直す」