沿革年表 1906〜2025年における重要度別の出来事(合計33件)

年月区分社長/CEO出来事年度売上高純利益
重要事項
大日本麦酒を設立
歴史的意義yutaka sugiura
1906年の三社合同は、過熱した競争を収束させるための産業再編であり、国内ビール市場の約77%を一社に集約する寡占構造を成立させた。多ブランドの併存と全国規模の供給体制は市場の安定に寄与し、戦前を通じてキリンとの二社体制が維持された。しかし戦後、この集中構造は経済民主化の対象とされ、朝日麦酒と日本麦酒への分割を招いた。市場統合の合理性が、その解体の根拠を提供した構図である。
1906
1-12月
重要事項
日本麦酒を発足
歴史的意義yutaka sugiura
1949年の分割は占領政策に基づく制度的決定であり、日本麦酒はサッポロとヱビスの二大ブランドを継承しながら新会社として再出発した。しかし旧ブランドを用いず「ニッポンビール」で市場に臨んだことで、消費者の記憶との接続が断たれた。キリンが既存ブランドのまま販路を広げる中で出遅れ、シェアは低下の一途をたどった。分割そのものよりも、分割後のブランド判断が市場順位を固定化させた。
1949
1-12月
東京証券取引所に株式上場
ニッポンビールの販売開始(柴田社長の大誤算)
歴史的意義yutaka sugiura
戦前に定着していたサッポロ・ヱビスを封印し、新ブランド「ニッポンビール」で市場に臨んだ判断は、消費者の記憶との接続を自ら断つ結果となった。販売現場では旧ブランドの説明が必要となり、指名買いを獲得できないまま、キリンに家庭向け市場を奪われた。社長の判断を覆せなかった組織構造も含め、サッポロのシェア3位定着を構造的に規定した一手であった。
FY55
1955/12
売上高
244億円
当期純利益
9.7億円
FY56
1956/12
売上高
239億円
当期純利益
10.6億円
国際飲料株式会社を設立
FY57
1957/12
売上高
280億円
当期純利益
10.7億円
サッポロビールの商標を復活
歴史的意義yutaka sugiura
サッポロビール商標の全国復活は、ニッポンビール戦略の失敗を経営がようやく認めた局面であった。北海道での限定復活がわずか1か月で数量回復を見せたことは、既存ブランドの認知力の強さを証明した。しかし8年の空白の間にキリンが家庭向け市場と供給体制を固め、シェア構造は既に動かし難いものとなっていた。正しい修正が遅れたことの代償は、その後半世紀にわたって続いた。
FY58
1958/12
売上高
327億円
当期純利益
10.5億円
FY59
1959/12
売上高
379億円
当期純利益
11.9億円
FY60
1960/12
売上高
460億円
当期純利益
16.3億円
大阪工場を新設
関西地区に拠点を新設。競合のアサヒビールに対する牽制
FY61
1961/12
売上高
652億円
当期純利益
20.8億円
厚木工場を新設(清涼飲料専門工場)
FY62
1962/12
売上高
691億円
当期純利益
21.3億円
FY63
1963/12
売上高
768億円
当期純利益
17.1億円
商号をサッポロビール株式会社に変更
FY64
1964/12
売上高
870億円
当期純利益
16.1億円
FY65
1965/12
売上高
885億円
当期純利益
16.2億円
FY66
1966/12
売上高
908億円
当期純利益
18.3億円
FY67
1967/12
売上高
1,082億円
当期純利益
21億円
ビールの国内シェアで25%を割り込む
サッポロビールの商号復活は、シェアの回復に寄与せず。ビール市場が拡大する中で、設備投資に先行したキリンの優位性を崩せなかった。この結果、1968年度にサッポロビールのシェアは25%を割り込んだ
FY68
1968/12
売上高
1,162億円
当期純利益
21.2億円
FY69
1969/12
売上高
1,245億円
当期純利益
22.7億円
FY70
1970/12
売上高
1,333億円
当期純利益
21億円
仙台工場を新設
FY71
1971/12
売上高
1,366億円
当期純利益
18.9億円
ヱビスビールの商標を復活
懸案であった「エビスビール」の商標を復活。復活にあたって、原料ホップを変更して味に変化を加え、価格帯を10円高く設定して高級路線を打ち出した。
FY72
1972/12
売上高
1,483億円
当期純利益
16億円
FY73
1973/12
売上高
1,622億円
当期純利益
13.8億円
丸勝葡萄酒株式会社を買収
ワイン醸造に参入
FY74
1974/12
売上高
1,598億円
当期純利益
15.2億円
FY75
1975/12
売上高
1,913億円
当期純利益
19.5億円
FY76
1976/12
売上高
1,752億円
当期純利益
20.1億円
ビールの国内シェアで20%前後に低迷
1971年のエビスビール復活を機に「サッポロビール」「ヱビスビール」の2ブランドで攻勢を図るも、キリンビールに対抗できず。辛うじてサッポロビールはシェアの低下を20%前後で食い止めたが、キリンの独走を阻止できなかった。
FY77
1977/12
売上高
2,084億円
当期純利益
30.2億円
FY78
1978/12
売上高
2,439億円
当期純利益
35.1億円
FY79
1979/12
売上高
2,512億円
当期純利益
31.1億円
静岡工場を新設
FY80
1980/12
売上高
2,765億円
当期純利益
34億円
FY81
1981/12
売上高
3,304億円
当期純利益
38.1億円
FY82
1982/12
売上高
3,478億円
当期純利益
39.9億円
FY83
1983/12
売上高
3,621億円
当期純利益
37.7億円
SAPPORO U.S.A., INC. を設立
ニューヨークに現地法人を設立
FY84
1984/12
売上高
3,799億円
当期純利益
44.2億円
FY91
1991/12
売上高
5,566億円
当期純利益
33.3億円
FY92
1992/12
売上高
5,771億円
当期純利益
31.8億円
FY93
1993/12
売上高
6,017億円
当期純利益
34.2億円
事業売却
恵比寿ガーデンプレイスを開業
歴史的意義yutaka sugiura
恵比寿工場跡地を売却せず保有・賃貸とした判断は、安定的なキャッシュフローをもたらす一方で、サッポロを「事業会社でありながら資産運用会社的な企業」へと変質させた。不動産収益がビール事業の低迷を覆い隠す構造が固定化し、本業の収益改善は先送りされ続けた。この選択が、2000年代以降のアクティビスト介入を招く構造的な伏線となったことは、開業時には想定されていなかった帰結である。
FY94
1994/12
売上高
6,639億円
当期純利益
32.9億円
FY95
1995/12
売上高
6,626億円
当期純利益
24億円
FY96
1996/12
売上高
6,655億円
当期純利益
38.1億円
FY97
1997/12
売上高
6,589億円
当期純利益
-245億円
FY98
1998/12
売上高
6,057億円
当期純利益
-111億円
FY99
1999/12
売上高
5,729億円
当期純利益
44.3億円
FY00
2000/12
売上高
5,640億円
当期純利益
13億円
FY01
2001/12
売上高
5,572億円
当期純利益
43億円
FY02
2002/12
売上高
5,117億円
当期純利益
11億円
持ち株会社に移行。サッポロホールディングスに商号変更
FY03
2003/12
売上高
4,795億円
当期純利益
24億円
FY04
2004/12
売上高
4,949億円
当期純利益
46億円
村上隆男
FY05
2005/12
売上高
4,536億円
当期純利益
36億円
村上隆男
焼酎事業を買収
FY06
2006/12
売上高
4,350億円
当期純利益
23億円
SLEEMAN BREWERIES LTD.を買収
カナダのビール醸造会社「スリーマンビール」の買収を決定。株式100%を306億円で買収した(取得総額)。同社はカナダ3位のビール醸造会社であり、サッポロHDは海外でのビール事業の展開を目論む
重要事項企業買収
村上隆男
Steel Partnersが買収提案
歴史的意義yutaka sugiura
2007年のスティールによる買収提案は、不動産収益に依存して本業の低収益が看過される構造を正面から突いた出来事であった。サッポロHDは防衛策とモルガン・スタンレー提携によって買収を阻止したが、低い資本効率という問題認識は市場に定着した。スティールの撤退後も、保有資産の規模に見合う収益を生めていないという評価は残り続け、16年後に同じ問いが再び提起されることになる。
FY07
2007/12
売上高
4,490億円
当期純利益
55億円
大阪工場の閉鎖を決定
ビールの製造拠点である大阪工場(1961年稼働・大阪府茨木市岩倉町2-1)について、2008年3月末に閉鎖する方針を決定。閉鎖の理由は「稼働率の低下」と「設備の老朽化」であった。なお、大阪工場を巡ってはスティールパートナーズが工場閉鎖を提言していたが、サッポロHDは閉鎖の発案は自社にあると主張した。
業務提携
モルガン・スタンレーと戦略的業務・資本提携を締結
歴史的意義yutaka sugiura
モルガン・スタンレーとの提携は、スティールの買収動機を削ぐために設計された防衛策であった。恵比寿GP株15%を500億円で売却し安定株主を確保する構図であったが、スティールの撤退で提携の前提は消失した。2012年に405億円で株式を買い戻し提携を解消。防衛は達成されたが事業構造は変わらず、一連の取引は防衛コストとして消化されるにとどまった。
村上隆男
サッポロ飲料の経営改革に着手
鈴木英世氏が子会社サッポロ飲料の社長に就任。不採算事業の撤退で黒字化
FY08
2008/12
売上高
4,145億円
当期純利益
76億円
村上隆男
FY09
2009/12
売上高
3,875億円
当期純利益
45億円
上條努
ベトナム現地法人の株式取得
FY10
2010/12
売上高
3,892億円
当期純利益
108億円
スティールパートナーズがサッポロHDの全株式を売却
重要事項企業買収
上條努
ポッカコーポレーションを買収
歴史的意義yutaka sugiura
ポッカ買収を起点に10年間で934億円を投下した食品・飲料事業は、売上成長と収益化のいずれも実現できなかった。自販機市場の飽和と価格競争の激化の中でヒット商品を生み出せず、設備減損110億円の計上に至った。買収と投資の規模に対して事業成果が伴わない構造は、飲料業界における競争環境の厳しさと自社の商品開発力の限界を映している。
FY11
2011/12
売上高
4,540億円
当期純利益
32億円
上條努
恵比寿ガーデンプレイスを再取得
2007年10月、サッポロHDはスティール・パートナーズの買収対策で、モルガン・スタンレー運用ファンドへ恵比寿ガーデンプレイス株式15%を500億円で売却していた。しかし2009年2月にスティールが買収撤回、2010年に全株売却で撤退し提携前提が消失。モルガン側も売却意向を示し、2012年3月に同15%を405億円で買い戻し提携も解消した。資金は社債100億円とみずほ銀行借入210億円。実質防衛コストとなった。
防衛目的の売却から405億円での買い戻しへ
FY12
2012/12
売上高
4,924億円
親会社株主に帰属する当期純利益
54億円
上條努
FY13
2013/12
売上高
5,098億円
親会社株主に帰属する当期純利益
95億円
上條努
恵比寿ファーストスクエアを竣工
サッポロ不動産開発は、保有する東京都渋谷区恵比寿一丁目のビル(土地は明治時代に取得し、社宅として活用。その後、高度経済成長期にビルを建設)について建て替えを決定。2014年にオフィスビル「恵比寿ファーストスクエア」として竣工した。
FY14
2014/12
売上高
5,187億円
親会社株主に帰属する当期純利益
3億円
上條努
FY15
2015/12
売上高
5,337億円
親会社株主に帰属する当期純利益
61億円
尾賀真城
FY16
2016/12
売上高
5,418億円
親会社株主に帰属する当期純利益
95億円
尾賀真城
FY17
2017/12
売上高
5,515億円
親会社株主に帰属する当期純利益
110億円
尾賀真城
FY18
2018/12
売上高
5,105億円
親会社株主に帰属する当期純利益
53億円
尾賀真城
FY19
2019/12
売上高
4,918億円
親会社株主に帰属する当期純利益
44億円
尾賀真城
最終赤字に転落。ポッカ設備で110億円の減損
2020年12月期、サッポロHDは当期純損失160億円を計上し1998年以来約22年ぶりの最終赤字に転落した。直接要因は新型コロナによる酒類需要急減だが、背景に飲料事業の構造的不振があった。酒類は業務用蒸発で赤字化、食品・飲料も低迷で不動産黒字では補えず、食品飲料事業で110億円の減損損失を計上。対象はポッカサッポロF&Bの名古屋・群馬両工場で、積極投資設備の回収断念を意味した。ただしポッカ買収のれん184億円は減損見送りとなった。
22年ぶりの最終赤字が示した事業構造の脆さ
FY20
2020/12
売上高
4,347億円
親会社株主に帰属する当期純利益
-161億円
尾賀真城
不動産売却により売却益232億円を計上
子会社の「サッポロ不動産開発」が保有する土地の一部売却を実施。対象は東京恵比寿の「恵比寿ファーストスクエア(2014年竣工)」。売却先は三井不動産系の投資ファンド「三井不動産デジタル・アセットマネジメント」。サッポロHDは固定資産売却益として232億円を計上
FY21
2021/12
売上高
4,371億円
親会社株主に帰属する当期純利益
123億円
尾賀真城
STONE BREWING CO.,LLCを買収
米国のビール醸造会社STONE BREWINGの株式100%を約226億円で買収。海外のビール事業において、2006年のSLEEMAN BREWEIES社(カナダ)の買収以来、2度目の大規模な買収へ
FY22
2022/12
売上高
4,784億円
親会社株主に帰属する当期純利益
54億円
株主対応
尾賀真城
3D InvestmentがサッポロHDに株主提案
歴史的意義yutaka sugiura
3D Investmentの株主提案は、2007年のスティール・パートナーズと同じ構造的問題を改めて突いた出来事であった。不動産収益が本業の低収益を覆い隠し、資本効率の改善が先送りされてきた構図は16年間変わっていない。問題提起者は交代したが、論点は「資産をどう活用し、資本をどう配分するか」という一貫したものであり、安定収益が改革を阻む循環の断絶が問われている。
FY23
2023/12
売上高
5,186億円
親会社株主に帰属する当期純利益
87億円
時松浩
FY24
2024/12
売上高
5,124億円
親会社株主に帰属する当期純利益
77億円
時松浩
FY25
2025/12
売上高
5,068億円
親会社株主に帰属する当期純利益
195億円
  1. 大日本麦酒を設立
    1906年の三社合同は、過熱した競争を収束させるための産業再編であり、国内ビール市場の約77%を一社に集約する寡占構造を成立させた。多ブランドの併存と全国規模の供給体制は市場の安定に寄与し、戦前を通じてキリンとの二社体制が維持された。しかし戦後、この集中構造は経済民主化の対象とされ、朝日麦酒と日本麦酒への分割を招いた。市場統合の合理性が、その解体の根拠を提供した構図である。
  2. 日本麦酒を発足
    1949年の分割は占領政策に基づく制度的決定であり、日本麦酒はサッポロとヱビスの二大ブランドを継承しながら新会社として再出発した。しかし旧ブランドを用いず「ニッポンビール」で市場に臨んだことで、消費者の記憶との接続が断たれた。キリンが既存ブランドのまま販路を広げる中で出遅れ、シェアは低下の一途をたどった。分割そのものよりも、分割後のブランド判断が市場順位を固定化させた。
  3. 東京証券取引所に株式上場
  4. ニッポンビールの販売開始(柴田社長の大誤算)
    戦前に定着していたサッポロ・ヱビスを封印し、新ブランド「ニッポンビール」で市場に臨んだ判断は、消費者の記憶との接続を自ら断つ結果となった。販売現場では旧ブランドの説明が必要となり、指名買いを獲得できないまま、キリンに家庭向け市場を奪われた。社長の判断を覆せなかった組織構造も含め、サッポロのシェア3位定着を構造的に規定した一手であった。
  5. 国際飲料株式会社を設立
  6. サッポロビールの商標を復活
    サッポロビール商標の全国復活は、ニッポンビール戦略の失敗を経営がようやく認めた局面であった。北海道での限定復活がわずか1か月で数量回復を見せたことは、既存ブランドの認知力の強さを証明した。しかし8年の空白の間にキリンが家庭向け市場と供給体制を固め、シェア構造は既に動かし難いものとなっていた。正しい修正が遅れたことの代償は、その後半世紀にわたって続いた。
  7. 大阪工場を新設

    関西地区に拠点を新設。競合のアサヒビールに対する牽制

  8. 厚木工場を新設(清涼飲料専門工場)
  9. 商号をサッポロビール株式会社に変更
  10. ビールの国内シェアで25%を割り込む

    サッポロビールの商号復活は、シェアの回復に寄与せず。ビール市場が拡大する中で、設備投資に先行したキリンの優位性を崩せなかった。この結果、1968年度にサッポロビールのシェアは25%を割り込んだ

  11. 仙台工場を新設
  12. ヱビスビールの商標を復活

    懸案であった「エビスビール」の商標を復活。復活にあたって、原料ホップを変更して味に変化を加え、価格帯を10円高く設定して高級路線を打ち出した。

  13. 丸勝葡萄酒株式会社を買収

    ワイン醸造に参入

  14. ビールの国内シェアで20%前後に低迷

    1971年のエビスビール復活を機に「サッポロビール」「ヱビスビール」の2ブランドで攻勢を図るも、キリンビールに対抗できず。辛うじてサッポロビールはシェアの低下を20%前後で食い止めたが、キリンの独走を阻止できなかった。

  15. 静岡工場を新設
  16. SAPPORO U.S.A., INC. を設立

    ニューヨークに現地法人を設立

  17. 事業売却
    恵比寿ガーデンプレイスを開業
    恵比寿工場跡地を売却せず保有・賃貸とした判断は、安定的なキャッシュフローをもたらす一方で、サッポロを「事業会社でありながら資産運用会社的な企業」へと変質させた。不動産収益がビール事業の低迷を覆い隠す構造が固定化し、本業の収益改善は先送りされ続けた。この選択が、2000年代以降のアクティビスト介入を招く構造的な伏線となったことは、開業時には想定されていなかった帰結である。
  18. 持ち株会社に移行。サッポロホールディングスに商号変更
  19. 焼酎事業を買収
  20. SLEEMAN BREWERIES LTD.を買収

    カナダのビール醸造会社「スリーマンビール」の買収を決定。株式100%を306億円で買収した(取得総額)。同社はカナダ3位のビール醸造会社であり、サッポロHDは海外でのビール事業の展開を目論む

  21. 企業買収
    Steel Partnersが買収提案
    2007年のスティールによる買収提案は、不動産収益に依存して本業の低収益が看過される構造を正面から突いた出来事であった。サッポロHDは防衛策とモルガン・スタンレー提携によって買収を阻止したが、低い資本効率という問題認識は市場に定着した。スティールの撤退後も、保有資産の規模に見合う収益を生めていないという評価は残り続け、16年後に同じ問いが再び提起されることになる。
  22. 大阪工場の閉鎖を決定

    ビールの製造拠点である大阪工場(1961年稼働・大阪府茨木市岩倉町2-1)について、2008年3月末に閉鎖する方針を決定。閉鎖の理由は「稼働率の低下」と「設備の老朽化」であった。なお、大阪工場を巡ってはスティールパートナーズが工場閉鎖を提言していたが、サッポロHDは閉鎖の発案は自社にあると主張した。

  23. 業務提携
    モルガン・スタンレーと戦略的業務・資本提携を締結
    モルガン・スタンレーとの提携は、スティールの買収動機を削ぐために設計された防衛策であった。恵比寿GP株15%を500億円で売却し安定株主を確保する構図であったが、スティールの撤退で提携の前提は消失した。2012年に405億円で株式を買い戻し提携を解消。防衛は達成されたが事業構造は変わらず、一連の取引は防衛コストとして消化されるにとどまった。
  24. サッポロ飲料の経営改革に着手

    鈴木英世氏が子会社サッポロ飲料の社長に就任。不採算事業の撤退で黒字化

  25. ベトナム現地法人の株式取得
  26. スティールパートナーズがサッポロHDの全株式を売却
  27. 企業買収
    ポッカコーポレーションを買収
    ポッカ買収を起点に10年間で934億円を投下した食品・飲料事業は、売上成長と収益化のいずれも実現できなかった。自販機市場の飽和と価格競争の激化の中でヒット商品を生み出せず、設備減損110億円の計上に至った。買収と投資の規模に対して事業成果が伴わない構造は、飲料業界における競争環境の厳しさと自社の商品開発力の限界を映している。
  28. 恵比寿ガーデンプレイスを再取得

    2007年10月、サッポロHDはスティール・パートナーズの買収対策で、モルガン・スタンレー運用ファンドへ恵比寿ガーデンプレイス株式15%を500億円で売却していた。しかし2009年2月にスティールが買収撤回、2010年に全株売却で撤退し提携前提が消失。モルガン側も売却意向を示し、2012年3月に同15%を405億円で買い戻し提携も解消した。資金は社債100億円とみずほ銀行借入210億円。実質防衛コストとなった。

    防衛目的の売却から405億円での買い戻しへ
  29. 恵比寿ファーストスクエアを竣工

    サッポロ不動産開発は、保有する東京都渋谷区恵比寿一丁目のビル(土地は明治時代に取得し、社宅として活用。その後、高度経済成長期にビルを建設)について建て替えを決定。2014年にオフィスビル「恵比寿ファーストスクエア」として竣工した。

  30. 最終赤字に転落。ポッカ設備で110億円の減損

    2020年12月期、サッポロHDは当期純損失160億円を計上し1998年以来約22年ぶりの最終赤字に転落した。直接要因は新型コロナによる酒類需要急減だが、背景に飲料事業の構造的不振があった。酒類は業務用蒸発で赤字化、食品・飲料も低迷で不動産黒字では補えず、食品飲料事業で110億円の減損損失を計上。対象はポッカサッポロF&Bの名古屋・群馬両工場で、積極投資設備の回収断念を意味した。ただしポッカ買収のれん184億円は減損見送りとなった。

    22年ぶりの最終赤字が示した事業構造の脆さ
  31. 不動産売却により売却益232億円を計上

    子会社の「サッポロ不動産開発」が保有する土地の一部売却を実施。対象は東京恵比寿の「恵比寿ファーストスクエア(2014年竣工)」。売却先は三井不動産系の投資ファンド「三井不動産デジタル・アセットマネジメント」。サッポロHDは固定資産売却益として232億円を計上

  32. STONE BREWING CO.,LLCを買収

    米国のビール醸造会社STONE BREWINGの株式100%を約226億円で買収。海外のビール事業において、2006年のSLEEMAN BREWEIES社(カナダ)の買収以来、2度目の大規模な買収へ

  33. 株主対応
    3D InvestmentがサッポロHDに株主提案
    3D Investmentの株主提案は、2007年のスティール・パートナーズと同じ構造的問題を改めて突いた出来事であった。不動産収益が本業の低収益を覆い隠し、資本効率の改善が先送りされてきた構図は16年間変わっていない。問題提起者は交代したが、論点は「資産をどう活用し、資本をどう配分するか」という一貫したものであり、安定収益が改革を阻む循環の断絶が問われている。