海外で飼料用アミノ酸を増産
アジア・中南米の畜肉需要拡大が飼料用アミノ酸の成長機会を提示
2000年代初頭、味の素のアミノ酸事業を取り巻く環境は食品用途中心から飼料用途へと需要の重心が移りつつあった。アジアや中南米で畜肉消費が拡大し、飼料効率を高めるための必須アミノ酸需要が伸長していた。とりわけリジンは市場規模が大きく数量成長が見込まれる分野として注目されていた。
一方で過去のビタミン事業では、欧州メーカーが先行して市場を形成した後にアジア勢の参入で供給能力が急拡大し、価格下落が進行した経緯があった。数量拡大を前提とする素材型事業は、市場参入構造の変化次第で収益が大きく変動するリスクを伴うことも認識されていた。
グローバル生産ネットワークの構築と高収率新菌の工業化を推進
こうした環境認識のもと、味の素は2000年代を通じて飼料用アミノ酸への積極投資を進めた。リジンを中心に北米、南米、欧州、アジアで生産設備の新設や能力増強を行い、消費地近接型のグローバル供給ネットワークを拡充した。同時に高収率新菌の開発と工業化を進め、単位あたりの製造コスト低減を図った。
この投資判断は、需要拡大が続く局面では稼働率の上昇により投下資本の回収が進み、売上成長と利益創出の両立が可能になるとの見通しに基づいていた。2000年代前半には飼料用アミノ酸事業は営業利益面で一定の寄与を示し、基幹事業としての位置づけを強めていた。
競争激化による収益変動が資本効率重視の経営転換を促す契機に
しかし2010年代に入ると市場環境は変化した。韓国のCJ第一製糖が供給能力を拡大し、リジン市場では価格を軸とした競争が顕在化した。供給余力の増加により相場は下落し、数量成長を前提とした事業モデルは収益変動の影響を受けやすくなった。
2014年3月期には飼料用アミノ酸事業が利益面で大きく振れ、四半期ベースで赤字となる局面も生じた。2000年代の積極投資で構築された生産能力は価格競争が激化する局面では利益率低下として表れた。この経験は成長市場であっても供給拡大が収益性に与える影響を再認識させ、その後の事業ポートフォリオ見直しや資本効率を重視した経営判断につながっていった。