味の素の直近の動向と展望
味の素の直近の業績・経営課題・市場ポジションと、今後の展望をまとめたページです。
セグメント構成や中期的な論点を、現経営陣の発信と有価証券報告書の記述をもとに整理しています。
直近の動向と展望
価格改定の断行と中期ASV経営の新たな策定
2023年、世界的な原材料価格の高騰が続くなかで、味の素は複数回にわたる果断な価格改定に踏み切った。社長の藤江太郎は「値上げは波乗りのようなもの。先端に乗って真っ先に上げる」(日経ビジネス 2023/12)と語り、価格改定の判断に対する積極的な方針を打ち出した。価格転嫁を計画的に進めたことで、コスト増加を上回る形での増収増益と、ROIC指標の同時改善という大きな経営成果を得るに至った。総合食品メーカーにとって価格改定は長らく難しい経営判断とされてきたが、資本効率を中核に据えた新しい管理体制のもとでは、価格転嫁の判断は事業存続のための必要条件として再定義された。実行力を伴う経営文化への転換が、味の素のなかで着実に進んでいることを具体的に示す代表的な事例となり、資本市場からの評価回復にも寄与した。
同じ2023年には中期ASV経営を策定し、事業ポートフォリオの継続的な見直しと、資本市場との対話を通じた企業価値の長期的な向上を経営目標として明確に打ち出した。ASVの枠組みは、前任の西井孝明が「食品の世界トップ10を狙う」(東洋経済オンライン 2017/5)との目標を掲げて進めたパーパス経営の流れを引き継ぎ、藤江体制のもとで実行段階へ移してきた。ASVのもとで食品事業と半導体材料事業はそれぞれの収益構造に応じた独自の成長戦略を持ち、社会課題の解決と企業価値の向上を重ね合わせる長期の経営の姿が示された。独占的な技術を抱えながら長らく正当に評価されてこなかった企業が、経営管理の根本的な転換を通じて資本市場との新しい関係を組み直す過程が、いまも着実に進行している段階にあるといえるだろう。対話を通じた長期視点の共有が、経営の行方を大きく左右している。
- 決算説明資料
- 統合報告書 2024
- 決算説明会 FY24
- 東洋経済オンライン 2017/5
- 日経ビジネス 2023/12
半導体材料事業と食品事業という異質な二事業による経営
ABF事業は世界的な半導体需要の変動を受けながらも、依然として高い収益性を維持しており、2024年3月期には売上高営業利益率が45.9%、営業利益が269億円に達した。味の素の連結業績全体への貢献が大きい高収益の柱として、決算資料のなかでも繰り返し強調される存在となっている。インテルを主要顧客とするこの半導体材料事業は、食品メーカーとしての味の素の本業とはまったく異なる収益構造と成長性を持ちながら、アミノ酸研究に由来する技術的な連続性を長く保ち続けている。長期視点での技術育成が企業価値に結びついた代表的な成功事例として、社内外で高く位置づけられている。
食品事業においても、調味料・加工食品・冷凍食品・コーヒー類などを含む国内事業と、アジアや中南米を中心とする海外食品事業の双方で、収益性の改善が継続的に進んでいる。ROIC経営の浸透に伴い、各事業が投下資本の観点から冷静に評価されるようになったという変化が見られる。半導体材料事業と食品事業という性格のまったく異なる二つの事業を、資本効率の観点から統合的に管理する経営体制は日本企業のなかでも稀有な存在である。味の素の事業構造は長い転換を経て、資本市場からの期待に応えうる新しい姿へと変貌を遂げた。
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- 統合報告書 2024
- 決算説明会 FY24
- 東洋経済オンライン 2017/5
- 日経ビジネス 2023/12