重要な意思決定
19633月

米コーンプロダクツ社と提携

背景

MSG単品依存のリスクと加工食品市場の成長が事業拡張を促す

1950年代後半、味の素はMSGで国内シェアを確保していたが、直接発酵法の普及により単一製品への依存が収益変動リスクを伴う状況となっていた。量産体制と全国販売網は維持されていたものの、MSG以外の収益源を確保する必要性が高まっていた。調味素材に加え最終消費者向けの加工食品へ領域を広げることで、売上成長の持続性を高める方向が検討された。

海外では加工食品市場が拡大しており、特にスープや調理用食品は付加価値の高い分野と認識されていた。ただし味の素にとって自社単独で新分野に集中投資するよりも、既に知見を持つ海外企業と提携する方が投下資本に対する効率を見込みやすかった。

決断

コーンプロダクツ社との提携によりクノール食品を発足

1963年、味の素は米国の食品原料大手であるCorn Products Companyと提携し、スープ食品を中心とする新会社としてクノール食品を発足させた。コーンプロダクツ社は加工食品分野での製品開発力と欧米で実績のあるブランドを有しており、味の素は日本市場での生産・販売機能を担った。

この分業により、味の素は既存の販路を活用しつつスープ製品を日本向けに展開した。MSG事業で培った原料調達や工場運営のノウハウは加工食品の量産にも転用された。調味素材メーカーから最終製品を扱う総合食品メーカーへと事業の幅を広げる判断であった。

結果

加工食品事業の確立がアライアンス型事業拡張の原型を形成

クノール食品の発足により、味の素はスープ製品を軸とした加工食品市場への参入を実現した。味の素の販売網を通じて全国に展開されたスープ製品は家庭用市場で一定の浸透を見せ、MSG単品依存の収益構成から複数カテゴリーの売上構成へと移行する基盤が形成された。

この提携は、味の素が外部のブランドと製品開発力を活用し、自社の生産・販売機能と組み合わせる手法を確立した点で意味を持った。後年のゼネラルフーズやダノンとの提携にも通じるアライアンス型事業拡張の原型であり、味の素が総合食品企業へと転換する過程の起点となった。