重要な意思決定
20144月

冷凍食品の強化

背景

価格競争と特売依存の構造のなかで冷凍食品の収益性が伸び悩み

2000年代後半、ニチレイの冷凍食品事業は市場規模・生産量の面では一定の地位を確立していたが、価格競争と特売依存によって収益性の伸びは限定的であった。冷凍食品は保存性が高く回転率が上がりにくいため、小売現場では値引き調整の対象になりやすい構造を持っていた。ヒット商品を投入しても中長期での利益確保が難しい状況が続いていた。

一方、消費者側では共働き世帯の増加やライフスタイルの多様化が進み、「簡便だが妥協しない食」のニーズが高まっていた。ニチレイの調査では、おいしさの満足度が十分でない商品は継続購入されにくいという傾向が明確になっていた。量の拡大ではなく、品質を軸に価値を再定義する必要性が浮上していた。

決断

生産体制再編と「本格品質」を前面に出す商品開発への方針転換

2014年、ニチレイは家庭用冷凍食品の競争力を再構築するため、生産体制の再編と品質志向の商品開発を同時に進めた。冷凍食品工場の新設・再編によりラインの機械化・省人化を進める一方、調理工程へのこだわりを強化し「本格品質」を前面に出す方針を明確にした。

象徴的な商品が「本格焼おにぎり」であった。手作り感や焼き工程の再現性を高め、家庭では再現しにくい味と香りを冷凍食品で提供する設計が採られた。さらに炒飯ではコーティング技術や高温短時間調理を組み合わせた独自工程を導入し、「本格炒め炒飯」としてリニューアルを実施した。簡便性ではなく味そのものを価値の中心に据えた商品群であった。

結果

「本格品質」路線の確立により冷凍食品の価値軸を価格から品質へ転換

本格品質を掲げた商品群は、特売に依存しない購買理由を消費者に提供することを目指した。「ニチレイの冷食だから買う」というブランド選好を形成するには、味の水準そのものが継続購入の判断基準となる商品設計が必要であった。

この方針転換は、1980年代以降の量的拡大路線から品質軸への移行を意味していた。手島社長が指摘した「自社が何を提供する会社かを伝える努力の不足」という課題に対し、商品そのものの品質で応えるアプローチが採られた。