サクサクコロッケを開発
冷凍コロッケは人気商品だが「揚げ物の手間」が購入頻度の制約に
1990年代前半、冷凍食品市場は拡大していたが、家庭での調理負担が普及の制約となっていた。冷凍コロッケは人気商品である一方、「揚げ物は油の処理が面倒」という声が主婦層を中心に多く購入頻度は伸び悩んでいた。電子レンジは急速に普及していたが、水分移動の特性から衣が湿りやすく、揚げ物の食感再現には不向きとされていた。
冷凍コロッケは「油で揚げる前提の商品」という暗黙の前提を抱えたまま市場にとどまっていた。おいしさと手軽さの間にある壁を超えるには、調理手段そのものを前提から見直す商品設計が必要であった。
電子レンジ専用設計の「サクサクコロッケ」を開発し調理前提を転換
1994年、ニチレイは電子レンジ調理専用の「サクサクコロッケ(ミニ)」を発売した。開発の起点は冷凍コロッケの購入実態分析と主婦層への調査であり、「油を使わずに揚げたての味を再現する」という目標が設定された。開発には約15名の若手社員が参加し、衣構造や水分制御に焦点を当てた検討が重ねられた。
最大の課題は電子レンジ特有の加熱方式でサクサク感を維持することだった。中種の水分が衣に移行する問題に対し、衣の多層化や配合調整、加熱時の水分挙動の制御といった技術的工夫が導入された。「揚げないのにサクサク」という従来の前提を覆す商品が成立し、「新・レンジ生活」シリーズとして市場投入された。
調理行動を起点とした商品設計が冷凍食品の用途拡大を実証
サクサクコロッケは味の改良ではなく調理行動そのものを起点に設計された商品であった。電子レンジの普及という生活環境の変化を前提に、冷凍食品が「油で揚げるもの」という制約を外すことで、新たな利用シーンを開拓した。
この商品は、冷凍食品の競争が味や価格だけでなく、調理方法や利用場面の設計にまで及ぶことを示した。消費者の調理負担を直接軽減するアプローチは、後のニチレイにおける「本格品質」路線の前段として、商品開発の視点を広げる契機となった。