重要な意思決定
19884月

アセロラドリンクを発売

背景

商号変更後も「新生ニチレイ」を象徴する消費者向け商品が不在

1980年代前半、ニチレイは商号変更とCI刷新を通じて「新生ニチレイ」を掲げたが、社外にその変化を直感的に伝える商品は存在していなかった。冷凍食品や物流は事業規模が大きい一方、生活者にとっては企業名と結びつきにくく、企業イメージ刷新の成果が消費者に届いていなかった。

1982年に開発部と事業部を分離し、新規事業探索の枠組みが整備された。技術蓄積の余地、核となる素材の希少性、事業拡張性といった条件を満たすテーマが求められ、複数案が検討されるなかで注目されたのが、ビタミンC含有量が極めて高い果実「アセロラ」であった。健康志向の高まりと食品機能を前面に出せる素材特性が評価された。

決断

冷凍技術との親和性を活かしたアセロラ飲料への参入と大量広告投下

1988年、ニチレイはアセロラを原料とする「アセロラドリンク」を発売した。アセロラは鮮度劣化が早く加工や保存が難しい素材であり、同社が培ってきた冷凍・低温管理技術との親和性が高かった点が決め手となった。原料はブラジルを中心に調達し、将来的な供給不安を見据えて現地での栽培・加工体制の構築も進められた。

発売当初は135g缶を中心とした展開で、1988年度の売上は約1,800万円にとどまったが、1989年には190g缶へ切り替え飲料市場へ本格参入した。販売チャネルもキヨスクやコンビニエンスストアへ拡大し、大量広告投下やテレビCMにより認知を一気に高めた結果、1990年には売上が80億円規模に達した。

結果

新生ニチレイの象徴商品として認知を確立し飲料事業の足がかりを形成

アセロラドリンクは、冷凍食品や物流とは異なる領域でニチレイの名前を消費者に直接届ける商品となった。ビタミンCの豊富さという機能的価値と、希少性のある素材という話題性を兼ね備え、新生ニチレイを象徴する製品として位置づけられた。

一方で、飲料市場は競合の参入障壁が低く、大手飲料メーカーとの競争にさらされやすい領域でもあった。アセロラという素材の独自性は差別化要因であったが、飲料事業全体としてニチレイの収益の柱に成長するかは、その後の事業展開に委ねられた。