重要な意思決定
2012

Indeedを買収

背景

HR世界首位への転換

2012年に峰岸真澄氏がリクルートHDのCEOに就任し、「HR分野でグローバルのトップになる」という明確な目標を掲げた。これにより経営の重心は国内情報誌中心から海外展開へと移行し、成長の主戦場は北米・欧州へと再定義された。グローバルで競争するには、既存事業の延長ではなく、規模と技術の両面で飛躍が必要と認識された。 背景には、2000年代の中国単独進出での苦戦があった。現地組織の統治や人材マネジメントで躓き、自前主義による海外展開の限界が露呈した。この反省から、海外は買収を通じて参入する方針へ転換し、まずは小規模案件を重ねてPMIの型を蓄積する戦略を採った。 2010年前後は海外派遣会社の買収が中心で、テクノロジー企業を主軸に据える構想は明確ではなかった。HRで世界首位を目指すとしても、派遣で規模を積み上げるのか、デジタル領域へ踏み出すのかは定まっていなかった。そうした揺らぎの中で、大型買収を実行できる資金枠を確保し、次の一手を探る局面にあった。

決断

Indeedを十億ドル取得

買収候補にIndeedが浮上した契機は、当時36歳で新規事業を担っていた出木場久征氏の提案であった。米国発の求人検索エンジンであるIndeedは、日本では無名に近い存在だったが、創業者と事業モデルに将来性を見出し、社内で買収を強く推した。トップ主導ではなく、個人の熱量が端緒となった案件である。 Indeedは2004年創業、従業員約550名、売上は100〜200億円規模と推定される一方、広告投資と開発費で赤字を計上していた。買収価格は約10億ドル、当時のリクルートにとっては1000億円超の初の巨額案件である。安定収益の派遣企業買収案と比較され、社内では議論が分かれた。 数週間から1か月という短期間のDDを経て、峰岸社長はIndeed買収を決断した。失敗すれば経営責任を問われかねない規模であったが、テクノロジーがHRの構造を変えるとの前提に賭けた判断であった。買収後は出木場氏がIndeedのCEOに就任し、現地に権限を委ねる体制を敷いた。

結果

テック企業への転身

買収後、Indeedは検索型求人というモデルを軸に北米・欧州で拡大を続け、2010年代を通じてグループの成長を牽引した。HRテクノロジー領域の売上は拡大し、リクルートの収益構造は紙媒体中心からオンライン中心へと転換していった。事業ポートフォリオの軸が明確に変わった。 財務面では、買収に伴い無形固定資産が大幅に計上され、資本政策の見直しも進んだ。成長資金の確保と透明性向上を目的に、2014年には東証一部へ上場するに至る。Indeedの存在は、上場ストーリーの中核的資産として位置付けられた。 PMIでは統合を急がず、Indeedの経営陣とエンジニア組織に裁量を委ねる方針を採った。現地主導の意思決定と技術重視の文化が維持され、事業は持続的に成長した。結果として、リクルートは総合HR企業からHRテクノロジー企業へと自己定義を変え、市場からの評価も大きく変化した。