米ブルーヨンダーを買収
売上7〜8兆円で伸び悩む「脱ハード」の模索
2010年代後半、パナソニックの売上高は7〜8兆円規模で頭打ちとなっていた。黒物・白物ともに海外勢との競争が激化し、ハード売切型モデルでは持続的成長を描きにくい状況にあった。津賀体制下ではBtoB領域の強化が掲げられ、モノ売りからソリューション・サービス型への転換が経営テーマとなっていた。
その中で注目されたのがサプライチェーンマネジメント(SCM)分野である。製造・物流・小売の需要予測や在庫最適化を担うソフトウェアは、データ活用による継続収益モデルを構築できる領域とされた。パナソニックは既に出資していた米ブルーヨンダーの完全子会社化により、BtoB事業の柱を確立しようとした。
71億ドルでブルーヨンダーを完全買収
2021年4月、パナソニックは米ブルーヨンダーを総額約71億ドル(約7700〜8000億円)で買収すると発表した。三洋電機買収以来の巨額案件であり、海外案件としては1990年のMCA買収に匹敵する規模であった。SCMソフトを軸にリカーリング型収益モデルへの転換を加速させるとされ、ハード主体からデータ・ソフト主体への軸足移動を象徴する一手であった。
市場の反応は慎重であった。発表当日、株価は一時前日比約5%下落し、過去の大型買収の記憶を想起させるとの指摘が相次いだ。MCA買収(61億ドル・5年で撤退)、三洋電機買収(8000億円・統合に難航)に続く三度目の巨額買収であり、投資に見合う収益成長をどの時間軸で実現できるかが問われた。
収益化は当初想定を下回り検証途上
買収から約4年が経過したが、ブルーヨンダーの収益化は当初想定ほど進んでいない。サイバー攻撃対策などの先行投資がかさみ、日本市場でのSCM導入も拡大が遅れた。新会社設立や上場構想も示されたが、グループ全体の業績を牽引する段階には至っていない。
ハードメーカーがソフト企業を買収して「脱モノ売り」を実現できるかという問いは、MCA買収から30年以上を経てなお回答が出ていない。8000億円規模の投資が成長エンジンとして機能するかは、依然として検証途上にある。