三洋電機を連結子会社化
デジタル家電の収益悪化とエナジー分野への布石
2000年代後半、デジタル家電の収益悪化と新興国メーカーの台頭に直面していたパナソニックは、新たな成長軸の確立を迫られていた。環境・エネルギー分野は次世代の基幹事業と位置づけられ、車載用リチウムイオン電池や太陽電池の技術確保が急務であった。三洋電機は二次電池で世界有数の競争力を持ち、HIT太陽電池など独自技術も保有していた。
2008年12月、両社は資本・業務提携契約を締結した。世界的金融危機のさなかで三洋の財務体質が弱まる一方、パナソニックは技術統合による競争優位の確立を急いでいた。韓国勢が巨額投資を打ち出す中、環境エネルギー領域で主導権を握るにはスピードが不可欠との判断が背景にあった。
8000億円規模のTOBで連結子会社化
2009年12月、パナソニックは公開買付け(TOB)により三洋電機の議決権株式の過半数を取得し、連結子会社とした。買収総額は最大で8000億円規模に達し、創業以来最大級の投資であった。将来的な完全子会社化を視野に入れた統合プロセスの第一段階であった。
エナジー事業を中核に据え、電池・太陽光・空調・冷凍機器を統合することで、単品販売から「家まるごと」「ビルまるごと」の総合提案型ビジネスへの転換を図る構想が掲げられた。なお三洋電機の創業者・井植歳男は松下幸之助の義弟であり、創業期の土間工場で共に働いた人物である。約60年を経て、松下から独立した企業がパナソニックに吸収される形となった。
統合は進むも財務負担と収益化に課題
2011年に完全子会社化を実施し、ブランド統一と組織再編を通じて統合を加速した。2014年には三洋社員約7000人をパナソニックへ転籍させ、人事制度の一本化も完了している。技術面では三洋製HIT太陽電池をPanasonicブランドで展開し、太陽光事業への本格参入も表明された。
一方で巨額投資に伴う財務負担は重く、有利子負債は増加し格付け会社からは懸念が示された。太陽電池事業は後に縮小に転じ、電池事業がテスラ向け供給を通じて収益化するまでには時間を要した。8000億円の投資に見合う統合効果が全面的に発現するには、当初の想定以上の年月が必要であった。