日立Astemoを発足・ホンダ系部品メーカー3社を統合
自動車部品事業の強化を目指しホンダ系3社の統合を決定
日立製作所は自動車部品事業(オートモティブシステム)を強化するため、2019年にホンダ系部品メーカー3社との経営統合を発表した。統合対象はケーヒン、ショーワ、日信工業の3社であり、いずれも収益性の低下が課題となっていた。日立オートモティブとホンダ系3社を一つの企業に集約し、自動運転など次世代技術の研究開発費を捻出する狙いがあった。
統合の受け皿として、日立製作所とホンダの合弁により新会社「日立Astemo」を設立する方針が示された。出資比率は日立製作所66.6%・ホンダ33.4%であり、日立が子会社として主導権を握る設計であった。2021年に日立Astemoが正式に発足し、買収した3社を同社に統合した。取得対価は約1960億円にのぼった。
統合により日立Astemoは自動車部品分野で一定の事業規模を確保した。2022年3月期の業績は売上高6430億円・当期純利益369億円であり、事業の立ち上がりとしては順調に推移した。だが自動車産業全体の供給網混乱や原材料価格の高騰が経営を圧迫し始めており、統合効果が安定的に発現するかは不透明であった。
出資比率を約40%引き下げ子会社から持分法適用外へ移行
2023年3月期に日立Astemoの当期純利益は▲810億円に転落した。前年度の黒字369億円から一転して大幅な赤字を計上し、統合後わずか2年で収益基盤の脆弱性が表面化した。日立製作所の連結業績においても日立Astemoの赤字は利益率の押し下げ要因となり、事業ポートフォリオ上の課題として認識された。
日立製作所は2023年に日立Astemoに対する出資比率を約40%引き下げる決定を行った。保有株式の約26%をホンダおよびJICキャピタルに合計約1580億円で売却し、2024年3月期に事業再編等利益として940億円を計上した。この株式売却により、日立Astemoは日立製作所の子会社から持分法適用外の位置づけへと移行した。
日立製作所は日立Astemoについて将来の株式上場を明言しており、自動車部品事業からの実質的な撤退を志向している。子会社から持分法適用外への移行は、連結利益率を押し下げる要因を切り離す財務的な判断であった。出資比率66.6%で設立した子会社を4年後に持分法外へ移行させた速度は、事業ポートフォリオの入替が加速していることを示す。
統合から撤退まで4年で自動車部品事業の位置づけを転換
約1960億円を投じてホンダ系3社を統合し子会社として発足させた日立Astemoは、FY2023の大幅赤字を受けて日立製作所の連結対象から外れた。株式売却で回収した1580億円は投下資本の約80%にあたるが、残存する出資持分の価値は将来のIPO時点での企業価値に依存する。統合の経済的な成否はなお確定していない。
日立Astemoの事例は、日立製作所における事業ポートフォリオ管理の変化を端的に示している。かつて上場子会社の保有を60年以上にわたり続けた日立が、新たに設立した子会社をわずか4年で連結外に移すという判断は、2009年の川村改革以降に確立された「入替」を前提とする事業運営の具体例である。
自動車部品事業からの実質撤退は、日立が社会インフラ・ITに経営資源を集中させる方針の延長線上にある。日立Astemoの持分法適用外への移行により、連結ベースの利益率に対する押し下げ圧力が解消された。日立製作所にとって自動車部品は成長投資の対象ではなくなり、ホンダとの合弁解消を視野に入れた段階的な撤退が進行している。