重要な意思決定
19605月

営業所と出張所の新設・全国を緻密にカバー

背景

品目24万点の空気圧機器を全国の工場に届ける課題

SMCが製造する空気圧制御機器は品目数が約24万点に及び、顧客となる製造業の工場は全国に分散していた。生産ラインの稼働に直結する製品であるため即応性が重要だが、品目数の多さゆえに代理店側で在庫を適正に管理することは現実的に困難であった。メーカー自身が販売と在庫管理を一元的に担わなければ、多品種の製品を迅速に届ける体制は成立しないという構造的な課題が存在していた。

1960年代の日本では製造業の設備投資が活発化し、工場の自動化需要が各地で高まっていた。空気圧機器の顧客は自動車産業が集積する中部圏、重化学工業の近畿圏、造船・鉄鋼の中国地方と地理的に広範囲にわたった。個々の顧客が求める品目は異なり、技術的な相談や仕様確認を伴う案件も多いことから、代理店を増やすだけでは対応しきれず、メーカー自身が営業拠点を配置して直接対応する必要性が生じていた。

決断

直接販売を軸とする全国営業網を構築し代理店の在庫保有を禁止

1960年の大阪営業所を皮切りに、1963年に名古屋営業所、1977年に広島営業所を順次新設し、主要な工業地帯をカバーした。1988年時点で全国5営業所・38出張所・約97社の代理店という販売体制が築かれた。各営業所にはPLの結果責任を持たせ、出張所を管轄下に置く分権的な組織運営を採用した。代理店経由の販売も認めたが、あくまで「営業所のパートナー」という位置づけに留め、直接販売を優先する方針を一貫させた。

特徴的なのは、代理店に対して在庫保有を禁止した判断にある。品目数が約24万点に及ぶ空気圧機器を各代理店が個別に抱えれば、過剰在庫と欠品が同時に発生するリスクが高い。この問題を回避するために在庫管理をSMC本社に集約し、メーカー主導で受注から出荷までの流れを管理する形をとった。販売網の末端に在庫を分散させず中央で一元管理することで、多品種製品の供給精度と在庫効率を両立させる仕組みであった。