重要な意思決定
20074月

Gallaher社を買収

背景

RJRI買収で世界3位に浮上したが欧州市場での存在感は限定的

2000年代半ばのたばこ産業では、先進国での規制強化と数量減少が進む一方、新興国では人口増加と所得向上を背景に需要拡大が続いていた。グローバル企業にとっては成長地域へのアクセスと複数地域に分散した収益構成が競争条件となっていた。とりわけ欧州は規制が厳しいものの流通網とブランド浸透度が高く、依然として重要な市場であった。

JTは1999年のRJRI買収を通じて世界3位の地位を確保していたが、欧州市場での存在感は限定的であった。一方、英ギャラハーはロシアやカザフスタンなど成長市場に強固な足場を持ち、欧州でも高いシェアを有していた。JTとの地理的な重複が少なく補完関係が成立しやすい構図が業界内で注目されていた。

決断

国内コスト改革で蓄積した投資余力を背景に約2兆2500億円の買収を実行

2006年末、JTは英ギャラハーに対して買収を打診し、2007年に約2兆2500億円で買収を実行した。欧州たばこ業界では過去最大規模の取引であった。この判断は突発的な機会対応ではなく長期にわたる準備の延長線上にあった。1990年代後半から事業の選択と集中を進め、医薬・食品以外の多角化事業からの撤退と国内事業のコスト構造改革を実行していた。

2003年に策定した「JT PLAN-V」では工場統廃合や人員再編を通じて利益基盤を引き上げ、海外投資に耐えうるキャッシュ創出力を確保した。ギャラハー買収はこの蓄積の上に置かれた決断であった。RJRIの買収・統合で得た実務経験も判断を支える要素となり、買収前から詳細な「買収後経営の青写真」が描かれていた。

結果

欧州と成長市場の事業基盤を確立し海外事業が利益の中核構造に

買収により、JTは欧州市場でのシェアを大きく引き上げ、製品ポートフォリオと流通網を拡張した。ギャラハーが持つ成長市場へのアクセスとJTの既存地域との補完関係により事業の地理的分散は一段と進み、海外たばこ事業がグループ利益の中核を占める構造が明確となった。

一方、統合は自動的に進むものではなかった。JTは統合100日計画を設定し、人事評価の一律化や情報開示の徹底により統合初期の不確実性を抑制した。ERP統合など業務基盤の再構築には時間を要したが、買収規模の拡大に伴い統合運営能力そのものが競争力の源泉として問われる局面に入っていた。