重要な意思決定
PC・リチウムイオン電池から撤退
背景
不採算事業の整理と地方工場の雇用維持という二律背反
平井一夫体制のもと、ソニーは2014年から不採算事業の売却に着手した。対象となったのはPC事業と電池事業であり、いずれもエレクトロニクス部門の中で赤字が常態化していた事業であった。ただし、これらの事業は長野県安曇野市や福島県郡山市といった地方に製造拠点を抱えており、単純な事業閉鎖は従業員の大量失職と地域経済への打撃を意味した。
地元自治体からの批判を最小限に抑えるため、ソニーは工場の閉鎖ではなく事業ごとの売却という手法を選択した。投資ファンドや事業会社に事業を譲渡し、製造拠点と雇用をセットで引き継がせることで、撤退に伴う社会的な摩擦を緩和する方針を採った。不採算事業からの撤退と地方雇用の維持という二律背反を、事業売却というスキームで解消しようとした判断であった。
決断
VAIOは投資ファンドへ、電池事業は村田製作所へ譲渡
2014年7月、ソニーはPC事業「VAIO」を投資ファンドの日本産業パートナーズに売却した。売却後の新会社「VAIO株式会社」は海外生産から撤退し、ソニーの国内製造拠点であった長野県安曇野市に本社を設置。従業員数240名の体制でファンド傘下での再出発となった。ブランドは継続しつつも、事業規模を大幅に縮小した形での存続であった。
2017年には電池事業を村田製作所に売却した。国内生産拠点である郡山工場を譲渡し、電池事業の従事者約8000名が村田製作所での雇用を継続する形で合意した。PC・電池という二つの事業売却により、ソニーのエレクトロニクス事業は構造的に軽量化された。これらの撤退が完了した後の2019年3月期、ソニーは過去最高益となる営業利益9162億円を計上している。