入園料の段階的な値上げを開始
入園者数の成長鈍化と投資資金の確保
2010年代に入り、東京ディズニーリゾートの年間入園者数は2,500〜3,000万人の高水準を維持していたが、伸び率は鈍化していた。1パークあたりの物理的キャパシティに上限がある以上、入園者数を際限なく増やすことはできない。一方で、テーマパーク事業は設備の鮮度維持のために恒常的な大型投資を必要とし、投資原資の確保は経営上の継続的な課題であった。
東京ディズニーランドの1デーパスポートは、開業時の3,900円から2010年時点で5,800円まで緩やかに引き上げられていた。しかし、これは27年間で約1.5倍にとどまり、物価上昇率と比較しても控えめな水準であった。入園者数を維持しながら収益を成長させるには、ゲスト1人あたりの売上高を構造的に引き上げる必要があった。
体験価値の向上と価格引き上げをセットで実施
2011年以降、オリエンタルランドは入園料の段階的な引き上げを開始した。2014年に6,400円、2016年に7,400円、2019年に7,500円と、数年おきに引き上げを実施した。値上げの都度、新規アトラクションの導入や施設の刷新を合わせて発表し、「体験価値の向上に対する対価」として価格改定を位置づけた。
2021年には、さらに踏み込んだ価格戦略としてダイナミックプライシング(変動価格制)を導入した。曜日や季節に応じて7,900円〜10,900円の価格帯を設定し、需要の高い日は高価格、閑散期は低価格とすることで、混雑の平準化と収益の最大化を同時に図る仕組みへと進化させた。
客単価上昇で売上高・営業利益が過去最高を更新
入園者数は横ばいから微減傾向にとどまり、値上げによる大幅な客離れは発生しなかった。ゲスト1人あたり売上高の上昇が売上全体を牽引し、2019年3月期には売上高5,256億円、営業利益1,293億円を記録して過去最高を更新した。入園者数の増加ではなく、客単価の成長が収益拡大の主たる原動力となった。
変動価格制の導入後は、閑散期の来園促進と繁忙期の需要調整が同時に機能し、パーク運営の効率が向上した。2025年3月期には売上高6,794億円、営業利益1,721億円とさらに過去最高を更新している。開業時3,900円だった入園料がピーク時10,900円に達したことは、約2.8倍の価格上昇を意味するが、それでもリピーターが離れない構造は、TDRのブランド力と体験価値の蓄積を反映している。