店舗運営改革を開始
大量出店時代の負の遺産としての不採算店舗
日本マクドナルドは1970年代から1990年代にかけて急速な多店舗展開を進めた結果、2000年代半ばには老朽化した店舗や立地条件の悪い店舗が多数存在していた。設備の劣化が目立つ小規模店舗や、面積が小さく効率の悪い立地の店舗は、全体の収益性を押し下げる要因となっていた。原田泳幸CEOのもとで進められた店舗運営改革は、この負の遺産を整理することが主眼であった。
改革は三つの柱で構成された。第一に、既存の直営店をフランチャイズに転換して売却すること。第二に、ポテンシャルの高い店舗をリニューアルする設備投資。第三に、不採算店舗の閉鎖である。いずれも大量出店時代に蓄積した店舗資産を選別し、収益性の高い店舗網に再編するという方向性であった。
直営店のFC転換売却と不採算店舗の閉鎖
2008年度より日本マクドナルドは直営店のフランチャイズ転換と店舗運営事業の売却を本格化した。設備投資負担の重い店舗をFC加盟者に売却することで投資負担を移転し、同時に売却益を確保する狙いがあった。2008年度から2012年度の5年間で累計171億円の売却益を計上し、これらは売上高に含める形で処理された。一方、2010年度には不採算店舗の閉鎖を断行し、486店舗を閉店するとともに97億円の店舗閉鎖損失を特別損失として計上した。
設備投資面では、郊外のドライブスルー併設型大型店舗のリニューアルに注力した。家族連れの利用が多く客単価が高いロードサイド型店舗は、日本マクドナルドの中でも特に収益性が高い業態であった。2006年度から設備投資を本格化し、2008年度までは年間約200億円前後の投資を実施した。
売却益の一巡と業績悪化の顕在化
店舗運営改革は短期的には業績を支えたが、構造的な問題を内包していた。FC転換による売却益は2012年度までに一巡し、2013年度以降は売却益による売上寄与がなくなった。直営店売上高は2008年度から2013年度にかけて約半減し、売上構造がフランチャイズ収入に大きく依存する形に変化した。実質的な不動産売却によって業績を支えていた構造が、売却対象の消失とともに露呈した。
2013年度に日本マクドナルドは大幅な減益決算を計上し、2014年に原田泳幸CEOが退任した。店舗の量から質への転換は必要な改革であったが、売却益を売上高に計上する会計処理と合わせて、本業の収益力の回復が不十分なまま売却益に依存する構造を生んでいた。原田体制11年間の店舗戦略は、改革と依存の両面を持つものであった。