単価改善のために高単価商品を投入
低価格路線からの脱却という経営課題
2004年にCEOに就任した原田泳幸氏にとって、最大の経営課題は低価格路線からの脱却であった。1990年代後半から日本マクドナルドはハンバーガーの大幅値下げを繰り返し、客数こそ維持したものの客単価の低下が収益を圧迫していた。100円マックに代表される低価格商品は集客装置としては機能したが、利益を生む構造にはなっていなかった。
原田CEOが打ち出した方針は、低価格商品を維持しつつ高単価商品を新たに投入し、メニュー全体の単価を引き上げるというものであった。100円マックで来店した顧客に対して、より高単価な商品を選択肢として提示することで、客単価の底上げを図る。低価格路線の全面撤回ではなく、価格帯の幅を広げることで収益構造を改善する戦略であった。
エビフィレオ・メガマック・新価格体系の導入
高単価戦略の第一弾として、2005年10月に「えびフィレオ」を期間限定で発売した。バリューセット580円という価格設定で、肉類ではなくエビを使用したヘルシーな商品として若い女性層の支持を集め、2006年1月にレギュラーメニューに昇格した。続く2007年1月には「メガマック」を期間限定で発売し、発売直後の1月14日には全店舗の1日あたり売上高が過去最高の23億円を記録した。
商品戦略と並行して、2006年5月には「新価格体系」を導入した。100円マックやハッピーセットなど一部の据え置き商品を除き、全商品で10〜40円程度の値上げを実施した。セットメニューは380〜560円から410〜580円に、サイドメニューは150〜250円から170〜270円に引き上げられた。高単価商品の投入と既存商品の値上げを組み合わせることで、メニュー全体の収益性を改善する打ち手であった。
全店売上高の過去最高と高単価路線の限界
高単価商品の連続投入と値上げ施策は、短期的には大きな成果を上げた。2009年4月にはクォーターパウンダーを全国発売し、2010年8月には月間全店売上高が513億円に達して過去最高を更新した。エビフィレオ、メガマック、クォーターパウンダーという三つの高単価商品が相次いでヒットし、客単価の改善に寄与した。
しかし、2010年以降は新たなヒット商品を生み出すことに苦戦した。高単価商品を発表しても消費者の支持が続かず、結果としてクーポン発行による実質的な値引きが常態化した。高単価を持続できない構造が露呈し、クーポンへの依存が客単価の改善効果を相殺する形となった。高単価商品の投入は一時的な収益改善には有効であったが、持続的な価格戦略としては限界を示した。