ポッカコーポレーションを買収
飲料事業の脆弱性と外部からの事業取得
サッポロHDは2000年代を通じて酒類事業への依存度が高く、飲料事業の規模は競合他社と比較して見劣りしていた。ビール市場の縮小が進む中、事業の多角化は経営課題として認識されていたが、自力での飲料事業拡大には限界があった。 そこに浮上したのがポッカコーポレーションである。同社は投資ファンドのアドバンテッジパートナーズによる再生途上にあり、売却先を探していた。直前の業績は売上高223億円・当期純損失8.1億円と赤字経営であったが、缶コーヒー・スープなどの商品群と全国規模の自販機ネットワークを保有していた。 サッポロHDにとって、ポッカの買収は飲料事業の基盤を外部から一括取得する手段であった。事業を一から育てるよりも、既存の商品・販路・生産設備を取得した上で統合する方が、時間と確実性の面で合理的と判断された。
348億円の買収と10年間の積極投資
2011年3月、サッポロHDはポッカコーポレーションの株式98.59%を348億円で取得した。取得原価のうち184億円がのれんとして計上された。買収後は既存飲料事業と統合し、子会社「ポッカサッポロフード&ビバレッジ」を発足させた。 買収にとどまらず、サッポロHDは以後10年間にわたって食品・飲料事業に積極的な設備投資を継続した。名古屋工場の第3工場新設、群馬工場の増強と第二工場建設、仙台工場の新設に加え、マレーシアとインドネシアにも工場を展開した。2012年度から2019年度までの設備投資累計は586億円に達した。 買収価格348億円と合わせると、食品・飲料事業への投下資本は累計934億円となる。年間約70億円の設備投資を継続する規模であり、事業の「第二の柱」への育成を明確に意図した資源配分であった。
売上低迷と設備減損110億円の計上
しかし積極投資にもかかわらず、食品・飲料事業の売上高は2010年代を通じて伸び悩んだ。自販機市場の飽和、飲料業界における価格競争の激化、ヒット商品の不在が重なり、2020年度から2022年度にかけて3期連続の減収を記録した。 収益面でも、増強した生産設備の減価償却負担と値上げの困難さがボトルネックとなった。投資は拡大したが、それに見合う売上成長と利益創出は実現できなかった。 2020年12月期、サッポロHDは食品・飲料事業で110億円の減損損失を計上した。対象は群馬工場・名古屋工場の土地・建物・設備であり、2010年代の積極投資の回収断念を意味した。一方、のれん184億円については減損が見送られており、帳簿上は買収の失敗が正式には認定されていない。しかし飲料事業の業績低迷が続く中で、のれんの減損リスクは高まっているとみられる。