モルガン・スタンレーと戦略的業務・資本提携を締結
スティールへの実効的な対抗策の必要性
2007年、スティール・パートナーズがサッポロHDの株式を18%超まで買い増し、買収提案を行ったことで、経営陣は防衛の具体化を迫られた。買収防衛策の維持と質問状による時間稼ぎだけでは不十分であり、スティールの買収動機そのものを削ぐ対応が求められていた。 スティールがサッポロHDに注目した最大の理由は、恵比寿ガーデンプレイスに代表される保有不動産の資産価値にあった。この不動産価値を外部に分散させることができれば、買収の経済的合理性を低下させられるとの判断が、提携の設計思想となった。
恵比寿GP株売却と資本提携の締結
2007年10月、サッポロHDはモルガン・スタンレーと「戦略的業務・資本提携」を締結した。業務提携の柱は、完全子会社・恵比寿ガーデンプレイスの株式15%(信託受益権)を、モルガン・スタンレーが運用する投資ファンドに500億円で売却することであった。資本提携としては、モルガン・スタンレーがサッポロHD株式を段階的に5%まで取得する計画が示された。 表向きの理由は不動産価値の向上であったが、実態はスティールが狙う不動産資産の価値を外部に分散させると同時に、安定株主を確保する防衛策であった。将来の株式取得を公表することでサッポロHD株価を押し上げ、スティールの買収コストを増大させる狙いも推定された。
提携の空転と405億円での再取得
しかし資本提携は計画通りには進まなかった。モルガン・スタンレーによる株式取得は2009年7月時点で1.8%にとどまり、5%目標には遠く及ばなかった。2009年2月にスティールが買収撤回を公表したことで提携の前提が消失し、モルガン・スタンレーは株式取得の中止を表明した。 2012年3月、サッポロHDは恵比寿ガーデンプレイスの株式15%を405億円で買い戻し、完全子会社に復帰させた。同時に提携を正式に解消した。500億円で売却し405億円で再取得した一連の取引は、防衛策としてのコストを内包するものであり、事業構造そのものは何も変わらなかった。