投資ファンドBPEAによる再生計画で合意
プラズマ撤退後も続いた経営再建の難航
2009年のプラズマテレビ撤退後、パイオニアはカーエレクトロニクスとオーディオに事業を集約して再建を図った。しかし、カーナビのOEM事業はほとんど利益が出ない体質であり、市販品もスマートフォンのGoogleマップに市場を侵食されていた。売上高は2000年代半ばに1兆円を目指していた水準から縮小を続け、抜本的な収益改善には至らなかった。
2018年4月、パイオニアは決算に継続企業の前提に関する疑義注記(ゴーイングコンサーン注記)を記載した。これを受けて金融機関が新規の貸付を見送る事態となり、資金繰りが急速に悪化した。銀行からの支援が断たれたことで、自力での再建は事実上不可能となり、外部の出資者を受け入れる以外に選択肢がなくなった。
投資ファンドBPEAによる全株取得と上場廃止
2018年12月、香港に拠点を置く投資ファンドのベアリング・プライベート・エクイティ・アジア(BPEA)がパイオニアの全株式を約1020億円で取得することで合意した。BPEAはデジタル地図データなど将来の自動運転に不可欠な技術を保有する点をパイオニアの価値として評価した。この技術とは、子会社インクリメント・ピーの地図データ事業を指していた。
2019年3月、パイオニアは東京証券取引所第1部の上場を廃止した。ファンド傘下での再建にあたり、ベインキャピタル出身の矢原史朗が社長に、P&G出身の北村淳がCFOに就任し、経営陣を刷新した。2020年にはBPEAが評価していた子会社インクリメント・ピーが売却され、「ファンドによるパイオニアの解体ショーが始まった」との見方も出た。
BPEAからEQTを経て台湾・群創光電の傘下へ
2022年、スウェーデンに本拠を置くEQTがBPEAを買収したことで、パイオニアはEQTの間接保有に移行した。事業の軸はカーナビ・車載音響に絞られ、2024年3月期の売上高は2415億円にまで縮小した。かつて1兆円を目指した企業の規模は、ピーク時の4分の1以下となった。
2025年6月、EQTはパイオニアの保有全株式を1636億円で売却すると発表した。買収先は台湾液晶大手・群創光電(イノラックス)の子会社CarUXホールディング(シンガポール)であり、2025年中に取引完了の予定である。群創光電はスマートコックピット事業とパイオニアの音響技術を組み合わせた車載統合製品の展開を構想している。創業から87年を経て、パイオニアは台湾企業の傘下で新たな局面を迎えることになった。