重要な意思決定
199612月

トレンドマイクロ社の株式35%を取得

背景

パソコン普及に伴うセキュリティ需要の拡大とソフトバンクの投資領域の拡張

1990年代半ば、パソコンの普及とインターネット接続の拡大に伴い、コンピュータウイルスの脅威が顕在化しつつあった。企業・個人を問わずパソコンの利用が日常化する中で、アンチウイルスソフトの需要は構造的に拡大する局面にあった。ソフトバンクはソフトウェアの流通業を祖業としており、セキュリティソフトの成長性はソフトバンクの事業領域と親和性が高い投資対象であった。

トレンドマイクロ社は東京・西五反田に本社を置くセキュリティソフト企業であり、1996年時点でグループ全体の社員数は180名であった。1000万台のコンピュータにアンチウイルスソフトを導入しており、1995年12月期のグループ業績は売上高19.3億円・税引き前利益5.6億円と、利益率の高い収益構造を確保していた。

決断

35億円で株式35%を取得し、高収益セキュリティ企業の筆頭株主に

1996年12月、ソフトバンクはトレンドマイクロ社に対して35億円を出資し、株式の35%を取得した。売上高19.3億円の企業に対して約100億円の企業価値評価(35億円÷35%)をつけた計算であり、売上高の約5倍に相当するバリュエーションであった。ただし、トレンドマイクロの税引前利益率は約29%と高く、成長期待を織り込んだ評価であった。

ソフトバンクとしては、Ziff-DavisやYahooへの投資と同様に、IT産業のインフラを担う企業への出資という位置づけであった。1996年はソフトバンクがテレビ朝日への出資、キングストンテクノロジーの買収など、年間を通じて大型投資を連発した時期であり、トレンドマイクロへの出資もこの一連の積極投資の一環であった。