テレビ朝日の株式を一部取得・衛星放送に投資
豪ニューズ社との提携でメディア事業への参入を構想した1996年の事業多角化
1996年、ソフトバンクは豪州のニュース企業(News Corporation Limited)と共同でメディア事業に進出する構想を打ち出した。孫正義氏はインターネットに加えてテレビ放送をデジタル情報革命の柱と位置づけており、衛星放送による多チャンネル化がIT産業と融合するシナリオを描いていた。提携相手のニューズ社はルパート・マードック率いるグローバルメディア企業であり、衛星放送の運営実績を有していた。
ソフトバンクはテレビ朝日への出資を足がかりにメディア事業を構築する方針をとった。1996年2月に旺文社の100%子会社「旺文社メディア」を、ニューズ社との折半出資で合計417億円(ソフトバンク負担208.75億円)にて買収した。旺文社メディアはテレビ朝日の株式21.4%を保有しており、表向きは旺文社メディアの買収であるが、実態は417億円でテレビ朝日株式21.4%を間接取得するスキームであった。
衛星放送への100億円出資とテレビ朝日の拒絶による事業撤退
1996年2月にソフトバンクはニューズ社との合弁(折半出資)で「ジェイ・スカイ・ビー」を設立した。資本金200億円のうちソフトバンクが100億円を出資し、日本国内における衛星放送事業への参入を開始した。テレビ朝日の地上波コンテンツと衛星放送を連携させることで、メディア事業の垂直統合を構想していた。
しかし、テレビ朝日側はソフトバンクによる支配を警戒した。既存のテレビ局にとって、IT企業による筆頭株主化は経営の独立性を脅かす事態であり、テレビ朝日は朝日新聞社との連携を強化する方向に動いた。1997年に朝日新聞社がソフトバンク保有のテレビ朝日株式を取得し、ソフトバンクのテレビ朝日への出資は立ち消えとなった。1998年にはジェイ・スカイ・ビーと日本デジタル放送サービス(パーフェクトTV運営会社)が合併し、ソフトバンクは放送事業を縮小した。