重要な意思決定
20214月

武田薬品から4製品の販売権を買収

背景

フェブリク特許切れと医薬品売上構成の歪み

2010年代を通じて、帝人の医薬品事業における最大製品は高尿酸血症治療薬フェブリクであった。最盛期には年間売上高約380億円を計上し、ヘルスケア事業全体の収益を支えていた。一方で、同製品は2022年に特許切れを迎えることが見込まれており、後発医薬品の参入による大幅な減収が避けられない状況にあった。 当時の帝人は、有力な新薬パイプラインを欠いており、フェブリクに代わる大型製品の創出は短期的には困難であった。医薬品販売事業では営業体制の維持が不可欠であり、売上規模の急減は組織・販促の両面でリスクとなっていた。このため、他社製品の導入を含めて、売上規模を補完する手段を検討する必要があった。

決断

武田薬品から糖尿病治療薬4製品の販売権取得

2021年4月、帝人は武田薬品から糖尿病治療薬4製品の国内販売権を取得した。対象はネシーナ錠、リオベル配合錠、イニシンク配合錠、ザファテック錠であり、取得額は約1330億円であった。帝人の医薬品事業においては過去最大規模の投下資本となった。 武田薬品は、シャイアー社買収後の財務改善を進める中で、糖尿病治療薬を注力領域から外す方針を示していた。研究開発から撤退済みであった同領域について、販売権の譲渡先を探していたところ、帝人が引き受ける形となった。帝人は生活習慣病領域を重点分野と位置付け、既存営業網を活用できる点を踏まえて取得を決断した。

結果

フェブリク減収の補填と売上規模の維持

販売権取得後、帝人は糖尿病治療薬4製品により年間248〜275億円規模の売上高を確保した。これは、フェブリクの特許切れによって見込まれていた減収額と概ね同水準であり、売上ベースでは減収影響を相殺する結果となった。医薬品販売事業における急激な規模縮小は回避された。 一方で、糖尿病治療薬市場は将来的な縮小も予想されており、取得製品はいずれも成熟期にある製品群であった。今回の投資は、創薬による成長ではなく、営業基盤の維持を目的とした性格が強かった。帝人の医薬品事業は、売上の安定確保には成功したものの、中長期の成長戦略については引き続き検討課題を残す形となった。