痛風・高尿酸血症治療剤「フェブリク」を発売
高尿酸血症という未開拓領域と創薬テーマの位置付け
1980年代当時、高尿酸血症や痛風は患者数が多いにもかかわらず、医薬品開発の優先度が高い疾患ではなかった。既存治療薬が長年使用されており、新規作用機序による創薬テーマとしては注目度が低かった。帝人ファーマにおいても、研究テーマとしての優先順位は高くなく、限られた研究資源をどの領域に配分するかが常に議論されていた。 一方で、食生活の変化や高齢化を背景に、高尿酸血症患者は潜在的に増加する可能性が指摘されていた。尿酸値の上昇は痛風だけでなく、腎障害や心血管疾患との関連も知られており、将来的な医療ニーズの拡大が見込まれていた。競合が少ない疾患領域である点も含め、長期的視点では研究対象として検討する余地があった。
少人数体制による創薬研究の継続
帝人ファーマでは、高尿酸血症治療薬の研究を期限付きプロジェクトとして開始した。当初の研究体制は極めて小規模で、担当研究者は1名に近い状態であった。多数の化合物を検証する中で有効性の高い候補が得られない期間が続き、研究継続の是非が問われる局面もあった。 それでも、社内外の研究者が自主的に協力し、共同実験や検討を重ねた結果、1991年に高い活性を示す化合物フェブキソスタットの合成に成功した。その後、安全性や品質を確認する前臨床試験を経て、1996年に臨床試験へ移行した。研究開始から約8年をかけて、承認取得を目指すプロセスが本格化した。
フェブリク発売と医薬品事業の収益柱化
2011年5月、帝人ファーマは高尿酸血症・痛風治療薬フェブリク錠を発売した。従来薬と比べて尿酸値を低下させる効果が確認され、痛風だけでなく高尿酸血症そのものを適応症として承認を取得した点が特徴であった。これにより、処方対象は痛風患者に限られず、潜在患者層まで拡大した。 フェブリクは国内外で販売が進み、医薬医療事業の売上と利益に大きく寄与した。最盛期には帝人の医薬品事業における最大製品となり、繊維事業に代わる収益源として位置付けられた。日本発の新薬として海外導出も進み、創薬からグローバル展開までを含む事業モデルを確立する結果となった。