2000 年10月

アコーディス社のアラミド繊維事業を買収

歴史的意義
M&Aで世界シェア上位を一挙に獲得したアラミド繊維の参入設計

自社のテクノーラでは生産規模が限定的であった帝人が、トワロン事業の買収によってデュポンに次ぐ世界シェアを一挙に獲得した。自社増設ではなくM&Aを選択したことで、工場・技術・販売網を同時に取得し、参入に要する時間を大幅に短縮した。税務訴訟など統合リスクは顕在化したものの、帝人が高機能素材メーカーとしての事業構造を転換する上で、本件は最も直接的な成果をもたらした買収であった。

背景

高機能繊維における世界シェア再編局面

1990年代後半、帝人は繊維事業の中でも汎用分野の収益性低下に直面していた。一方で、アラミド繊維や炭素繊維など高機能素材は、ITインフラや自動車安全部材向けを中心に需要拡大が見込まれていた。ただし、これら分野では先行企業が生産能力と顧客基盤を押さえており、後発での設備新設による参入は投下資本と時間の面で不利であった。

帝人は既存技術としてアラミド繊維「テクノーラ」を有していたが、生産規模は限定的で、量産用途では競争力に課題を抱えていた。とくに光ファイバー被覆材やシートベルト用途では米デュポンや欧州メーカーが市場を先行しており、高機能繊維で世界上位に位置付けられるか否かが今後の事業ポートフォリオを左右する状況にあった。

決断

トワロン事業の買収による世界シェア上位への一挙参入

2000年10月、帝人はオランダのアコーディス社からパラ系アラミド繊維「トワロン」事業を買収した。自社増設ではなくM&Aを通じて生産能力と顧客基盤を取得する判断であり、短期間で世界シェア上位に位置付くことを狙った。買収対象には既存工場、技術、人材、販売網が含まれていた。

当時、トワロンはデュポンに次ぐ生産規模を持ち、買収によって帝人のアラミド繊維生産能力は大幅に拡大した。交渉は複数年に及び、価格や事業切り出し条件を巡って調整が続いた。買収後には税務処理を巡る見解の相違から訴訟に発展したが、2006年に和解が成立している。

結果

世界上位ポジション獲得と統合リスクの顕在化

トワロン事業の取得により、帝人はアラミド繊維で世界一、二位を争う位置に立った。光ファイバー、自動車安全部材などの用途で販売拡大が進み、高機能繊維は同社の重点事業として位置付けられた。既存設備を活用できた点は、投下資本回収の時間短縮につながった。

一方で、買収後の統合にはコストと時間を要した。税務問題や組織運営の調整が発生し、M&A特有のリスクが顕在化した。それでも帝人は、高機能素材で世界上位に入るという目標に対し、M&Aを主要な手段として用いる方向を明確にした。本件は同社の選択と集中を象徴する事例となった。