重要な意思決定
19994月

アドバイザリーボードを導入

背景

PBR0.3倍という市場評価と経営監督の不在

1990年代後半、帝人は株式市場での評価低下に直面していた。1997年以降、株価は低迷し、株価純資産倍率(PBR)は0.3倍まで下落した。これは企業価値が解散価値を下回る水準であり、経営のあり方そのものが問われる局面であった。社内分析では、投資家向け情報発信の弱さに加え、環境変化に対する対応が市場に十分伝わっていない点が整理された。

同時に、社員に対しては目標設定と業績評価の仕組みが導入されていた一方、社長自身の評価は制度上存在していなかった。サラリーマン経営者である以上、トップも例外なく評価されるべきだという問題意識が社内外で共有され、経営監督の透明性を高める仕組みが論点として浮上していた。

決断

社長解任勧告権を持つ社外有識者ボードの設置

1999年4月、帝人はアドバイザリーボードを導入した。前デュポン会長のジョン・クロール氏や、キッコーマン社長の茂木友三郎氏など、社長経験者を中心とする6名で構成され、社長の業績評価や経営方針について意見を述べる役割を担った。評価の結果次第では社長解任勧告も行い得る仕組みであり、日本企業としては踏み込んだ試みであった。

このボードは年数回開催され、経営改革の進捗や中期計画について事前資料をもとに議論が行われた。経営判断を社内論理だけで完結させず、外部の視点を継続的に取り入れることで、資本効率や資産の使い方を含めたマネジメント改革を進める狙いがあった。帝人は経営の説明責任を明確化し、市場との対話を重視する姿勢を打ち出すことになった。