重要な意思決定
コンピュータの導入で在庫をコントロール
背景
全量買取契約のリスクを制御するための情報システム投資
急速な店舗拡大に対応するため、1992年4月にファーストリテイリングは社内コンピュータシステムを稼働した。1988年の時点で全店舗にPOSを導入済みであり、1992年からは販売数量と在庫の把握を社内システムで一元管理する体制を整えた。SPAの核心は中国メーカーとの全量買取契約にあり、売れ残りリスクは全てファーストリテイリングが負う構造であった。過剰在庫を回避する仕組みの構築は、SPA企業としての生死を分ける経営課題であった。
1988年のPOS導入→1992年の社内システム稼働という段階的なIT投資は、店舗数が22から55へと急拡大する過程で不可避となったものである。個々の店舗のPOSデータを本部で集約し、商品別・店舗別の販売動向をリアルタイムで把握する体制が、急拡大する店舗網の情報統制を可能にした。
決断
月曜朝から火曜夕方まで続いた売価変更会議という運用設計
情報システムを在庫削減に直結させる仕組みとして、1995年時点でファーストリテイリング社内では毎週月曜日に「売価変更会議」が実施されていた。POSの販売データをもとに、柳井正社長と経営陣が現場担当者とともに全商品の売値を検討・変更する会議であり、在庫消化のスピードを経営判断で直接制御した。
売価変更会議は月曜日の朝から火曜日の夕方まで続く長時間の会議であり、経営陣がこれだけの時間を費やす事実は、在庫管理がファーストリテイリングにとっていかに重要な課題であったかを物語る。全量買取のリスクをシステムと会議体で制御するこの運用設計は、SPAという事業モデルの裏側にある実務の重みを示している。