重要な意思決定
1991

日本長期信用銀行から借入調達を実施

背景

地方銀行が融資を渋る中での資金調達の壁

1991年からファーストリテイリングは、SPA構築に必要な店舗拡大のための借入調達を本格化した。しかし、創業者の柳井等の代から40年にわたり地方銀行1行との取引に限定されてきた同社にとって、急速な融資拡大は容易ではなかった。柳井正が語るように「急に店をぼんぼん出し、カネを貸してくれと言ったので、信用してもらえない」状況であり、決算ごとに業績報告に訪れても「褒めてくれるけど貸してはくれない」という対応であった。

日本の銀行融資は横並びの慣行が強く、メインバンクが融資を決定しなければ他行も追随しない構造にあった。ファーストリテイリングにとって、この横並び構造を突破する起点となる金融機関の確保が急務であった。

決断

長銀広島支店の「ベンチャー」評価が突破口に

転機となったのは、日本長期信用銀行広島支店との取引開始であった。長銀はファーストリテイリングを「老舗会社」ではなく「ベンチャー企業」として評価し、融資を決定した。この長銀の判断を受けて、従来は融資を渋っていた広島銀行や山口銀行といった地方銀行からも借り入れが実現した。横並び意識の強い日本の金融慣行において、長銀という信用力のある金融機関の融資決定が、他行の追随を引き出す突破口となった。

ファーストリテイリングは資本ではなく借入金による調達を志向したため、1991年から1994年にかけて自己資本比率は12%台で推移した。未上場企業であった同社の借入金の保証は柳井正個人が背負っていたと推察される。1993年度の借入金期末残高は35億円であり、上場前の3年間、SPA構築に向けた急速な店舗拡大は柳井正の個人信用に全面的に依存していた。