重要な意思決定
1991

社名をファーストリテイリングに変更

背景

SPAの具現化に向けた社名変更という形式行為

1991年、柳井正はグローバルな調達体制の確立を志向し、社名を小郡商事からファーストリテイリングに変更した。SPAを社名に体現させることで、商店街の紳士服店という出自からの決別を社内外に宣言する意図があった。当時、日本国内にSPAを標榜する小売業は稀有であり、ファーストリテイリングが国内企業として最先発の存在であった。

しかし業界内でさえSPA(製造小売業)という概念は一般的ではなく、メディアからは「わかりにくい社名」と評されることもあった。裏を返せば、ユニクロが立脚するSPAという概念はそれほど新しく、競合から注目されないビジネスモデルであった。この認知の低さは、先発者としての競争優位を意味していた。

決断

社名変更を起点とした不可逆の事業転換

社名変更と同時に、ファーストリテイリングはSPAを具現化するための急速な店舗拡大に着手した。大量のカジュアルウェアを販売する仕組みを構築し、中国メーカーからの大量ロット仕入れを実現することが目的であった。有価証券報告書には「商品の企画開発から販売まで一貫した商品政策の確立により流通経路の短縮をはかる」と記載されており、SPAの方針が経営の根幹に据えられたことが確認できる。

社名変更は形式的な行為であるが、小郡商事という商店街時代の名前を捨てることで、経営陣と従業員に対して後戻りできない転換を印象づけた。「名前を変える→構造を変える→調達を変える」という連鎖の起点として、社名変更は象徴的な意味を持っていた。