重要な意思決定
柳井正氏が小郡商事の代表取締役社長に就任
背景
家業の承継と新規事業への転換
1984年に柳井正は家業の小郡商事の経営を引き継ぎ、代表取締役社長に就任した。就任と同時に、柳井正は宇部商店街の紳士服店というビジネスモデルからの脱却に着手した。商店街の衰退を10年間にわたって体験した柳井正にとって、既存事業の延長線上には成長の余地がないという認識は明確であった。
家業については1984年にオーエス販売株式会社として分社化し、新規事業であるユニクロを小郡商事の本業に据える組織変更を行った。この分社化は、家業の従業員が新事業のボトルネックとなることを回避する措置であったと推察される。旧事業と新事業の人員を分離することで、ユニクロの展開に必要な人材採用と店舗運営の設計を白紙から行える環境を整えた。
決断
祖業の分離による新事業への経営資源の集中
柳井正の社長就任は、単なる事業承継ではなく、事業モデルの転換を意味していた。商店街の紳士服店という祖業を分社化した上で、カジュアルウェアの大量販売という新しい事業を小郡商事の本業に据えるという判断は、創業家の事業を否定する行為でもあった。この決断の背後には、商店街型小売業の成長限界に対する明確な認識と、イトーヨーカ堂での勤務経験を通じて得た大規模小売業の可能性への確信があった。
1984年の社長就任、祖業の分社化、ユニクロ1号店の開業という三つの意思決定は同年に集中しており、柳井正が就任初年度から不可逆な転換を断行したことを示している。