重要な意思決定
1960

小郡商事株式会社を設立

背景

商店街の発展に乗じた法人化と複数店舗展開

宇部新川駅前商店街の発展に伴い、紳士服店・小郡商事も業容を拡大した。1960年に柳井等は、それまで個人事業であった小郡商事を資本金600万円で株式会社に改組した。1969年には北九州市の小倉に「メンズショップOS小倉店」を出店し、創業の地である宇部以外への店舗展開を開始した。帝国銀行の調査によれば、1967年時点の小郡商事の業績は年商約8000万円、年間利益157万円、従業員数22名であり、取引金融機関は広島銀行宇部支店の1行のみであった。

商店街の小売業としては中規模の会社であったが、商圏が駅前商店街に依存する限り、事業規模の成長には構造的な上限があった。本店所在地は創業地の宇部新川駅前商店街(山口県宇部市中央町2-12-12)に置かれた。2022年現在、この場所は公園として整備されており、かつての店舗があった形跡は残っていない。

決断

商店街型小売業の枠内での拡大という選択

法人化と小倉への出店は、柳井等による事業拡大の試みであった。しかし、広島銀行1行との取引関係が示すように、資金調達の規模は限定的であり、商店街を基盤とした小売業の域を出るものではなかった。年商8000万円に対して利益157万円という利益率の低さは、紳士服の仕入れ構造と商店街の家賃負担による収益圧迫を示唆している。

この時期の小郡商事は、商店街の繁栄に乗じた自然な成長であり、事業モデルそのものの転換は行われていない。のちに柳井正がユニクロを立ち上げ、ロードサイド展開とSPA構築に踏み切った背景には、この商店街型小売業の成長限界を間近で見た原体験がある。