重要な意思決定
宇部中央銀天街商店街にて「小郡商事」を開店
背景
石炭産業の企業城下町に生まれた零細紳士服店
ファーストリテイリングの創業は1949年に遡る。山口県宇部で主に土木業に携わっていた柳井等(やない・ひとし)が、宇部新川駅前の商店街(宇部中央銀天街商店街)にて紳士服店「メンズショップ小郡商事」を開業した。宇部新川駅前は宇部を代表する石炭会社・宇部興産の本社拠点の最寄りであり、1950年代の石炭産業の興隆に支えられた企業城下町であった。駅前商店街の発展とともに小郡商事は商売を軌道に乗せたが、商店街の零細小売店の一つに過ぎなかった。
ユニクロが店舗展開を開始するのは1984年であり、それまでの35年間、小郡商事は商店街の紳士服店として経営されていた。創業者の事業眼というよりも、石炭景気と駅前立地という時代と地域の恩恵が事業の成立条件であった。
決断
駅前商店街という立地への依存
小郡商事の商売は、宇部興産の従業員という安定した顧客層と、宇部新川駅前という人通りの多い立地に依存する構造であった。石炭産業が隆盛を極めた1950年代から1960年代にかけて、商店街の人通りは安定しており、零細な紳士服店であっても一定の売上を確保できる環境にあった。
しかしこの依存構造は、石炭産業の衰退とモータリゼーションによる商店街の空洞化という、のちの構造変化に対して脆弱であった。創業期の成功体験が、結果として商店街からの脱出を遅らせる要因ともなった。ユニクロのロードサイド展開やSPA構築といった後年の経営判断は、この創業期の依存構造からの離脱として読み解くことができる。