繊維事業から撤退
高分子事業の収益力低下と繊維赤字の吸収余力の喪失
ユニチカの繊維事業は長期にわたり収益性の低下が続いていた。衣料用繊維や不織布を含む事業領域は、海外製品との価格競争や市況変動の影響を受けやすく、安定的な利益創出が困難な状態が慢性化していた。一方で、食品包装用PETフィルムを中心とする高分子事業が一定の利益を確保しており、2020年頃までは繊維事業の低収益を全社損益のなかで吸収する構図が維持されていた。
しかし2021年度以降、高分子事業の利益率も低下に転じ、繊維事業の赤字を補填する余力は急速に縮小した。2014年には取引銀行から繊維事業の撤退を含む構造改革を進言されていたが、雇用維持と事業継続を優先し判断は先送りされた。この間にも有利子負債は高水準を維持し、自己資本比率の低下が進行した。低収益事業を抱えたままの経営が約10年にわたって続き、自力での財務改善は限定的なものにとどまっていた。
官民ファンドと銀行への870億円の金融支援要請と繊維事業からの撤退
2024年11月28日、ユニチカは記者会見を開き、祖業である繊維事業からの撤退を正式に発表した。撤退対象は衣料用繊維、不織布、産業繊維の一部であり、売上高の約4割に相当する事業規模だった。同時に、官民ファンドであるREVICおよび取引銀行に対し、総額870億円規模の金融支援を要請した。このうち約430億円については債権放棄を求める内容であり、自力再建が困難な財務状況を前提とした判断だった。
この撤退判断の背景には、自己資本比率の低下と有利子負債の増大により、事業継続を前提とした通常の資金調達が難しくなった事情があった。繊維事業を維持しながら財務改善を図る選択肢はすでに現実性を失っており、外部支援を受け入れたうえでの事業縮小が唯一の対応策として選ばれた。取締役全員の辞任も同時に発表され、金融支援を受けるための責任体制の明確化が図られた。
再成長戦略ではなく上場企業としての存続模索への局面転換
繊維事業からの撤退は、新経営体制のもとで再成長を目指す転換というよりも、事業の延命に長期間を費やしたうえでの縮小整理としての側面が強かった。1969年のユニチカ発足以来、繊維事業は収益性の低迷が続いてきたが、段階的な縮小にとどまり撤退判断は約55年間にわたって先送りされてきた。この間、資産売却や工場閉鎖といった対応は行われたが、事業ポートフォリオ全体を再構成する判断には踏み込まれなかった。
2024年に発表された取締役全員の辞任は、攻勢的な経営再建の姿勢を示すものではなく、金融支援を受けるにあたっての責任整理という性格が強かった。残された高分子事業も十分な収益力を回復できておらず、事業集中は自発的な選択というよりも制約条件として迫られた対応だった。ユニチカは成長戦略の再構築ではなく、上場企業としての存続自体を模索するフェーズに入ることとなった。