米ngmoco社を買収
国内依存構造と海外展開の遅れ
2009年以降、DeNAは怪盗ロワイヤルを起点とするモバイルソーシャルゲーム事業によって急成長を遂げていたが、その収益基盤は日本国内市場に大きく依存していた。国内ではフィーチャーフォン向けゲームが高い収益性を持っていた一方、市場環境や規制、プラットフォーム構造が海外とは大きく異なり、この成功モデルをそのまま海外に展開することは困難であった。 同時期、米国を中心にスマートフォンが急速に普及し、App Storeを中心としたアプリエコシステムが形成されつつあった。ゲーム市場の重心はフィーチャーフォンからスマートフォンへ移行し始めており、DeNAにとっても、国内成功に安住すれば中長期的な成長機会を失うという危機感が強まっていた。しかし、自社単独で海外市場に参入し、現地の開発文化やプラットフォーム仕様に適応するには時間と経験が不足していた。
海外ゲーム企業の大型買収
こうした背景のもと、DeNAは2010年10月、米国のモバイルゲーム開発会社ngmocoを約4億ドルで買収する決断を下した。ngmocoはiPhone向けゲーム開発で実績を持ち、米国市場における開発力とプラットフォーム理解を備えていた。DeNAはこの企業を取り込むことで、海外市場への即時参入とスマートフォン領域での知見獲得を同時に実現しようとした。 この買収は、国内で確立した高収益モデルを海外に横展開するのではなく、現地企業を中核に据えるという点で、DeNAにとって初めての本格的なグローバルM&Aであった。短期間での事業立ち上げを優先し、内製による段階的展開ではなく、外部の開発組織と人材を一体で取り込むという選択がなされた。
海外展開基盤の獲得と摩擦の顕在化
ngmocoの買収により、DeNAは北米を中心とした海外ゲーム市場に拠点と開発力を確保し、スマートフォン向けゲーム開発に関する知見を獲得した。一方で、日本発の運営型ソーシャルゲームモデルと、米国主導のプロダクト志向型開発文化との間にはギャップが存在し、組織運営や戦略の統合は容易ではなかった。 結果として、買収は即座に大きな収益貢献をもたらしたわけではなく、海外事業は試行錯誤の局面が続いた。それでもこの経験は、DeNAにとって海外展開の現実的な難易度を認識し、以後のグローバル戦略を再設計するための重要な学習機会となった。ngmoco買収は、成長の延長線ではなく、事業モデル転換期における先行投資として位置付けられることになった。