村上ファンドが株主提案
資本余剰と議決権の脆弱性
2000年3月の上場により、サイバーエージェントは207億円を調達し、約200億円のネットキャッシュを保有していた。しかし、ネットバブル崩壊によって時価総額は100億円前後まで下落し、保有現金が企業価値を上回る状態が続いた。株主から見れば、現金の用途が示されない限り、資本効率は著しく低い状況にあった。
さらに創業者藤田晋の持株比率は実質34%前後と推定されるものの、単独で安定的に議決権を支配できる水準ではなかった。インテリジェンスやUSENなど外部株主の持分が大きく、上場後はGMOが21%超を取得するなど、経営権は必ずしも盤石ではなかった。資本構造の不安定さが、外部からの介入余地を生んでいた。
現金還元要求と対立構造の顕在化
2001年、村上世彰率いる投資事業有限責任組合M&Aコンサルティングは、MAC INTERNATIONALを通じて約9%超の株式を取得した。取得総額は約9億円規模で、時価総額が低迷する局面での買い増しであった。同ファンドは、保有現金が時価総額を上回る状況を問題視し、株主還元を求めて藤田社長に面談を申し入れた。
藤田晋は現金還元要求を拒否し、資金は将来投資に充てる方針を堅持した。しかし、村上ファンドが株式をGMOに売却すれば、GMOが30%超を保有し拒否権を持つ可能性が生じるなど、経営権を巡る緊張が高まった。資本政策が経営存続に直結する局面に入った。
楽天提携による独立維持
この局面で、楽天の三木谷浩史が介入し、GMOから株式を取得することで藤田の経営を支持する姿勢を示した。2001年12月、楽天とサイバーエージェントは業務資本提携を締結し、表向きはEC分野での協業とされたが、実質的には買収防衛策の性格を持っていた。
その後、村上ファンドは株式を売却し、GMOも段階的に持分を処分した。結果として資本関係は整理され、経営の独立性は維持された。2001年の攻防は、上場後の資本余剰と支配権問題が経営戦略に直結することを示した重要な転換点であった。