システム再構築を決定
技術的負債の顕在化進行
2018年時点のZOZOTOWNの基幹システムは、約16年間にわたり大きな刷新が行われておらず、VBScript/IIS/SQLServerを中心とする構成で運営されていた。業務ロジックの多くはSQLServer上のストアドプロシージャに集中し、テストコードは存在せず、品質は手動テストに依存する体制であった。成長を支えてきた一方で、変更容易性と拡張性に制約が生じていた。
さらに、開発体制は完全内製ではなく、複数の外部ベンダーへ委託する形で構築されていた。アーキテクチャの全体像が分断され、仕様理解や改善の速度が限定される構造となっていた。クラウド利用が拡大する中でAWSアカウントのコスト増加も課題となり、システム構造そのものが経営上のボトルネックとして認識され始めた。
加えて、データ分析基盤が十分に整備されておらず、事業データを横断的に解析する環境が整っていなかった。ファッション特化型ECとして取扱高が拡大する一方、データ活用による施策立案や改善サイクルの高速化には限界があった。技術基盤の刷新は、単なる開発効率の問題ではなく、事業競争力を左右する構造課題へと変化していた。
内製化と基盤再構築へ転換
こうした状況を受け、ZOZOは2018年よりシステムのリプレイスに着手した。レガシー環境を前提とした漸進的改修ではなく、アーキテクチャ全体を見直す方針へ転換。技術的負債を前提とした延命ではなく、再設計による抜本的な再構築を選択した。この判断は短期的な効率よりも中長期的な拡張性を重視する決断であった。
2020年にはエンジニア組織の再編を実施し、中途採用を積極化することで内製化比率を引き上げた。外部ベンダーへの依存度を下げ、プロダクト責任を社内に集約する体制へ移行。アーキテクチャ設計から運用までを一貫して担う組織へ再構築することで、開発速度と品質の両立を目指した。
同時に、分析基盤としてBigQueryを導入し、データの集約と可視化を推進。分断されていたデータを統合し、意思決定に活用できる基盤整備を進めた。単なるインフラ刷新ではなく、プロダクト開発とデータ活用を接続する技術戦略へと軸足を移した。
技術基盤の再定義進展
リプレイスの進展により、従来のブラックボックス化した構造から、責任範囲が明確な設計思想へと転換が進んだ。内製化の進展は、機能追加や改善のスピード向上に寄与し、開発組織の自律性を高める方向へ作用した。テストや品質管理の仕組みも段階的に整備され、属人的運用から脱却する基盤が整いつつあった。
データ基盤の整備により、事業横断的な分析が可能となり、在庫回転や購買行動の把握が高度化した。EC事業においてはデータ活用の巧拙が競争力を左右するため、分析基盤の整備はマーケティングや商品戦略にも波及する構造的変化をもたらした。
技術基盤の刷新は短期間で完結するものではないが、ZOZOはレガシー依存からの転換を明確に打ち出した。物流投資に続き、技術投資を競争力の中核に据える姿勢を明示したことで、ファッションECからテックカンパニーへの転換を志向する段階へと移行した。