独自の発注システムを導入
100円ショップの流通構造が抱えていた課題
1990年代の100円ショップ業界は、大量出店と大量仕入れによる規模拡大が成長の原動力だった。大創産業をはじめとする大手は、中国や東南アジアの協力工場で製造された商品を問屋を通さずメーカーに直接発注し、20万〜30万個、なかには100万個単位で仕入れることでコストを抑えていた。しかし大量仕入れには弊害もあった。工場や物流の状況によっては次の納品までの間隔が長くなり、無駄な在庫を抱える可能性があった。品切れや在庫ロスが発生しても、大量仕入れによる仕入値の安さで補っているのが実態であり、個々の店舗で何が売れているかを正確に把握する仕組みは業界全体として未整備だった。
セリアもこの課題と無縁ではなかった。1990年代後半、セリアは東海地方を中心に店舗数を拡大し、1998年度には売上高70億円・238店舗の規模に成長していた。しかし店舗数が増えるほど、各店舗の在庫管理や発注の精度が経営課題として浮上した。100円ショップは商品回転率が低い業態であるにもかかわらず、品揃えの豊富さが集客の鍵を握る。売れ筋だけでなく売れない商品も含めて棚に並べることで「何でこれが100円なのか」という驚きと衝動買いを誘う業態特性があり、在庫の最適化と品揃えの魅力を両立させることは容易ではなかった。
データに基づく発注の仕組みを自社で構築
1997年、セリアの創業者・河合宏光は独自の発注システムの導入を決断した。当時の100円ショップ業界では、品数を増やせば売上が伸びるという経験則が支配的であり、データに基づいて発注を管理するという発想は一般的ではなかった。100円均一という価格帯では1商品あたりの粗利が小さく、POSや発注システムへの投資は費用対効果が見合わないとされていた。しかし河合は、勘と経験に頼る発注では店舗数の拡大に伴う複雑性に対応できないと判断し、システム投資に踏み切った。
このシステムは、カラー表示画面でペン入力ができるモバイル型の発注専用端末を採用し、設計から開発まですべて地元企業に発注して構築された。河合が目指したのは、売れ筋商品を把握し、商品の仕入れや入れ替えの判断をデータで裏付けることだった。この1997年の発注システム導入は、後の2004年における全店リアルタイムPOS導入、2006年の発注支援システム導入へとつながるセリアのIT経営の出発点となった。河合は「衝動買いから目的買いへ」という消費者行動の変化を見据え、品数の多さではなく品揃えの最適化で勝負する経営へと舵を切り始めた。