au経済圏の最大化を戦略目標に設定
背景
スマートフォン普及による収益構造の変質
2010年代にiPhoneをはじめとするスマートフォンが普及したことで、携帯電話会社の収益構造に根本的な変化が生じた。従来のフィーチャーフォン時代にはキャリアが端末・キャリア決済・通信費用を一体的に掌握していたが、スマートフォンの普及により端末と決済の主導権がAppleやGoogleに移行する可能性が濃厚となった。KDDIにとって通信以外の新たな収益源の確保が喫緊の経営課題となった。
2015年頃からKDDIは携帯通信に限定しない事業展開を志向し、金融・保険・電力など生活インフラ領域への進出を開始した。ライフネット生命との資本業務提携やauでんきのサービス開始は、通信契約を起点として顧客の生活全般にサービスを拡張する戦略の布石であった。
決断
会員基盤を軸にした送客モデルへの転換
2016年5月にKDDIは中期経営計画において「au経済圏の最大化」を戦略目標として公表した。au WALLETによるポイント付与、auでんき、auのほけん・ローン、au STARなどの付帯サービスを通じて、通信契約者を金融・生活サービスの利用者へ転換する構想であった。
KDDIが目指したのは、自社の会員基盤を活用してサービス提供企業への「送客」を行い、手数料収入を得るプラットフォーム型のビジネスモデルであった。通信サービスの提供者から、顧客接点を持つ送客基盤への役割転換であり、楽天が「EC×クレジットカード」を軸とした経済圏を構築したのとは異なるアプローチで、携帯キャリア会員という資産の収益化を図った。
au経済圏の構想は、通信契約者という既存の会員基盤を金融・生活サービスの送客チャネルとして再定義する試みである。楽天がECとクレジットカードの利用データを経済圏の軸に据えたのに対し、KDDIは月額課金で接点を持つ通信契約者を起点とした。両者とも「経済圏」を志向しながら入口が異なる点は、プラットフォーム構築における資産の活かし方の違いを映している。スマートフォン時代に端末と決済の主導権を失うという危機認識が、通信以外の収益源を組み立てる原動力になったと読み取れる。