音楽ダウンロードサービス「着うた」を開始
3Gインフラ整備が開いた音楽配信の可能性
2002年12月にKDDIは携帯電話向けの音楽ダウンロードサービス「着うた」の提供を開始した。CDMA方式への一本化によって整備された3Gインフラが、音声コンテンツのダウンロードを技術的に可能にしたことが背景にあった。楽曲のメロディー部分を30秒間再生する形式であり、1曲あたりの単価は80〜100円に設定した。
主な利用用途は電話の着信音や目覚まし音であり、KDDIにとっては端末契約数の増加と通信回線利用料の増加という二重の収益効果が見込めるサービスであった。通信キャリアが自らコンテンツの配信基盤を提供し、回線利用による収益を確保するというビジネスモデルの設計であった。
レコード6社均等出資による権利処理の枠組み
人気楽曲の提供にはレコード会社との権利関係の整理が不可欠であった。KDDIはSME、エイベックス、ビクター、東芝EMI、ユニバーサルミュージックと自社の6社で均等出資の共同会社「レーベルモバイル」を2001年に設立し、楽曲のライセンス処理を一元化した。2003年9月までに5000曲の配信体制を整え、安室奈美恵や平井堅などの人気アーティストの楽曲をサービス開始時点から揃えた。
ハードウェア面では、携帯端末メーカーに着うた対応機種の開発を要請し、3Gインフラ、対応端末、楽曲ライブラリという三要素を同時に揃える体制を構築した。通信キャリアの立場を活かし、端末仕様の標準化とコンテンツ調達を並行して進めた。
700万ダウンロード達成とau契約純増数の首位獲得
着うたは携帯電話で手軽に人気楽曲を聴けるサービスとして支持を集め、2003年8月時点で楽曲ダウンロード数は700万件に達した。KDDIは楽曲ダウンロードに伴う通信料収入を確保し、コンテンツ配信がインフラ収益を押し上げる構造を実現した。
顧客にとって着うたはauを新規契約する動機の一つとなり、2003年度にKDDIはauの年間契約純増数でNTTドコモを上回り国内首位に躍り出た。コンテンツの魅力がキャリア選択を左右するという携帯電話市場の競争構造を顕在化させ、KDDIのサービス戦略の方向性を決定づけた。