重要な意思決定
20255月

M&Aなし自力出店で売上高1兆円を達成

背景

M&Aによる規模拡大が主流のドラッグストア業界

2010年代以降、日本のドラッグストア業界ではM&Aによる大規模再編が加速した。2021年にはマツモトキヨシとココカラファインが経営統合し、売上高1兆円規模の企業が誕生。ツルハホールディングスとウエルシアホールディングスの統合も進み、業界上位はM&Aによるスケールメリットの追求に走った。

こうした中、コスモス薬品は創業以来一度もM&Aを行わず、全店舗を自力で出店するという方針を一貫して堅持していた。横山英昭社長は「店舗年齢が若いこと=競争力」という考え方を示し、M&Aで取得した老朽化店舗を抱えるよりも、自社フォーマットの新店を出し続けることの優位性を主張していた。

決断

全店舗を自前出店で成長する方針を堅持

コスモス薬品がM&Aを採用しない判断は、単なる保守主義ではなく、同社のビジネスモデルに根ざした合理的な選択であった。小商圏型メガドラッグストアという独自フォーマットは、立地選定・店舗設計・商品配置・物流網が一体として設計されている。他社の既存店舗を取得しても、このフォーマットへの転換コストは新規出店と大差がなく、むしろ店舗年齢の若さという競争力を失う。

また、M&Aには組織文化の統合という課題が伴う。コスモス薬品は全店舗で統一されたオペレーションを徹底しており、15分刻みのワークスケジュール管理、発注の自動化、セミセルフレジの導入など、効率性の高い店舗運営が販管費率17%という業界最低水準を支えている。異なる運営文化を持つ企業を統合すれば、この均質性が崩れるリスクがあった。

結果

M&Aなしで売上高1兆円を突破した初のドラッグストア企業に

2025年5月期、コスモス薬品は連結売上高1兆113億円を達成した。M&Aを一切行わず、自力出店のみで売上高1兆円を突破したドラッグストア企業は同社が初めてであった。期末店舗数は1,609店。創業から約52年をかけて到達した。

全店舗が自社フォーマットで統一されていることの競争優位は、出店ペースにも表れている。コスモス薬品は年間100〜140店の新規出店を継続できるが、これは出店判断から開店までのプロセスが標準化されているからこそ可能な速度である。M&Aに依存する成長戦略では、統合作業に経営資源を割かれ新規出店のペースが落ちるリスクがある。コスモス薬品は自力出店に集中することで、このトレードオフを回避し続けた。