重要な意思決定
20035月

ポイント還元を廃止しEDLPに転換

背景

ポイント還元と特売による集客モデルの限界

コスモス薬品は1994年に業界に先駆けてポイント還元制度を導入し、顧客の囲い込みを図っていた。日替わり特売も集客手段として活用しており、当時の小売業界では標準的な販促手法であった。しかし宇野正晃は、ポイント還元と日替わり特売に構造的な問題を感じていた。ポイントカードの運用コスト、特売時の価格変動、チラシの制作・配布コスト。これらの販促費用は最終的に商品価格に転嫁され、「毎日来店するロイヤルカスタマー」にとっては不利な仕組みであった。

宇野はしまむらの藤原秀次郎会長と3〜4ヶ月に1度面会しており、「お客様に公平であれ」「従業員の負担を減らせ」という教えに強い影響を受けていた。ポイントカードは特売日にまとめ買いをする顧客に有利で、毎日少しずつ購入するロイヤルカスタマーには不利である。宇野は「毎日のように来店するロイヤルカスタマーは、意外なことにポイントカードを嫌う」と分析していた。

決断

ポイント還元と日替わり特売を全廃

宇野正晃は2001年に日替わり特売を廃止し、2003年5月にはポイント還元制度も全廃した。「業界に先駆けて始めたポイントカードを、業界に先駆けて止めた」と宇野は後に語っている。

この決断には明確な計算があった。ポイント還元を廃止すれば一時的に売上が落ちることは避けられない。そこで宇野は、あえて上場前のタイミングで廃止を断行した。上場後であれば株主や市場からの批判を受けるが、非上場であれば短期的な売上減を許容できる。廃止によって浮いたコストは商品価格の恒常的な引き下げに充て、EDLP(Every Day Low Price)への転換を図った。同時期には閉店時間を22時から21時、さらに20時へと繰り上げ、来客の多い17時〜19時の接客を充実させる方針も打ち出した。

結果

販管費率の業界最低水準と顧客満足度15年連続1位

EDLP戦略への転換は、短期的な売上減を経た後に成果をもたらした。チラシ制作費、ポイント管理システムの運用費、価格変更に伴う人件費が削減され、その原資は商品の恒常的な値下げに充てられた。「いつ行っても安い店」という顧客認知が定着し、来店頻度の向上につながった。

2004年11月に東証マザーズに上場した後、コスモス薬品の販管費率は上場小売業の中でも最低水準(約17%)を記録し続けている。2011年にはJCSI(日本版顧客満足度指数)ドラッグストア部門で第1位を獲得し、以降2025年まで15年連続で首位を維持している。EDLPによる毎日の低価格と、標準化された店舗の利便性が高く評価された結果であった。