重要な意思決定
20195月

三洋化成との統合(撤回)

背景

SAP市場の収益性低下と業界再編の模索

2010年代後半、紙おむつ向けSAP市場は成熟期に入り、日本触媒と三洋化成はともに収益性の低下に直面していた。両社はSAP事業で競合関係にあったが、市場の成長鈍化と価格競争の激化により、単独での収益改善には限界が見え始めていた。特に日本触媒は欧州市場でのSAP事業においてベルギー拠点を中心に値下げ競争に巻き込まれていた。

一方、三洋化成は中国向けを中心としたSAP事業で相対的に安定した収益を維持していた。両社の事業ポートフォリオは補完関係にあり、統合によってSAP事業の規模拡大とコスト構造の改善を図る余地があると判断された。SAP市場における競合同士の統合は、業界再編による生き残り策として構想された。

決断

新会社「Synfomix」設立による経営統合の発表

2019年5月、日本触媒と三洋化成は経営統合によって新会社「Synfomix(シンフォミクス)」を設立する計画を公表した。株式移転方式による統合を予定し、実施時期は2020年10月に設定された。SAP事業における競合2社の統合は、原料から製品までのサプライチェーンを再編し、グローバル市場での競争力を強化する狙いがあった。

しかし、統合に向けた準備期間中に事業環境が急変した。2020年に新型コロナウイルスの影響が拡大し、日本触媒の欧州SAP事業が不振に陥った。2020年10月に日本触媒は業績の下方修正を発表し、ベルギー関連で119億円の減損損失を計上することとなった。

結果

業績格差の拡大により経営統合を白紙撤回

日本触媒の業績悪化により、統合比率の前提が崩れた。三洋化成の中国向けSAP事業は相対的に安定していたのに対し、日本触媒の欧州事業は大幅な減損を計上する状態にあった。両社の業績格差が拡大したことで、三洋化成から日本触媒に対して統合中止の申し入れがなされたとされる。

2020年10月21日、日本触媒と三洋化成は経営統合の白紙撤回を発表した。日本触媒は2021年3月期に経営統合の中止に伴う関連費用17億円を特別損失として計上した。SAP事業の収益性改善を目的とした業界再編は、統合準備期間中の業績変動によって頓挫した。統合の前提となる業績見通しの安定性が確保できない中での経営統合判断のリスクが顕在化した事例であった。