重要な意思決定
20233月

バリューアクトが社長退陣を提案

背景

バリューアクトが不採算事業の温存を問題視し対立が先鋭化

2020年11月からバリューアクトはセブン&アイHDとの対話を開始し、2023年までに約30回の意見交換を実施した。バリューアクトが問題視したのは、セブン&アイにおける不採算事業(スーパーストア事業=旧イトーヨーカ堂、百貨店事業=旧そごう・西武)の存在であり、高収益のコンビニ事業に経営資源を集中することで企業価値が向上すると主張した。

2022年5月にバリューアクトは経営上の問題点を指摘した75枚のスライド資料を公開し、公開討論の形で経営改善を要求した。これに対しセブン&アイの経営陣は「同社が関心を有するのは、堅実な価値創造を犠牲にした上での短期的な株価上昇だけである」としてバリューアクトの提案を否定し、両者は公然と対立する構図となった。

決断

取締役4名の退陣を要求する株主提案の実行

コンビニ事業への集中に踏み切らないセブン&アイの経営陣に対して、バリューアクトは2023年3月に株主提案を通じて井坂社長を含む取締役4名の退陣を要求した。バリューアクトの主張の核心は、セブンイレブンのコンビニ事業が生み出す利益がスーパーストアや百貨店の不採算によって毀損されているという構造的問題にあった。

コングロマリット・ディスカウントの解消を求めるその主張は、セブン&アイの企業価値を単一事業として評価した場合の株価との乖離を根拠としていた。不採算事業からの撤退を決断できない経営陣を交代させることが、企業価値向上の前提条件であるという論理であった。

結果

井坂社長の低水準での続投と、否決後に進んだ不採算事業の整理

2023年5月の定時株主総会において井坂社長の取締役選任は賛成比率76.36%で承認され、低水準ながら続投が決定した。バリューアクトが提案した取締役4名の選任は賛成比率30%台で否決された。76%という賛成比率は経営陣への信任が盤石ではないことを示していた。

バリューアクトの株主提案は否決されたが、その後セブン&アイは2023年9月にそごう・西武を売却(譲渡関連損失1296億円)し、2024年11月にはヨーカ堂33店舗の閉鎖計画を発表するなど、不採算事業の整理に段階的に着手した。バリューアクトの提案を退けた経営陣が結果として同じ方向の施策を実行に移す構図は、アクティビストの要求が時間差で経営判断に影響を与える典型的パターンを示している。