重要な意思決定
NCシェアで70%を確保。売上高経常利益率(36.6%)で日本トップを達成
背景
1980年代の工作機械自動化によるNC需要の増大
1980年代、日本国内の製造現場では工作機械の自動化が急速に進展し、その頭脳にあたるNC(数値制御装置)への需要が増大した。NC装置は工作機械の動作を数値で制御するコンピュータであり、加工精度の向上と生産効率の改善に不可欠な部品であった。工作機械メーカー各社がNC搭載型の工作機械の生産を拡大する中で、NC装置の供給元であるファナックと三菱電機の間で競争が激化していった。
ファナックは創業以来、数値制御のソフトウェア技術と、高精度な制御を可能にするサーボモータの技術を磨いてきた。これに加え、個別顧客の仕様に合わせた特注品ではなく、汎用品に経営資源を集中する戦略を採った。汎用品への特化は量産効果による原価低減を可能にし、「高性能かつ安価なNC」という競合他社には模倣しにくいポジションをファナックにもたらした。
決断
汎用品特化による価格支配力の確立と利益率日本一の達成
この戦略の結果、ファナックはNC装置における国内シェア70%を確保し、三菱電機など競合他社を大きく引き離した。市場をほぼ独占したことにより、ファナックは汎用NC装置の価格決定権を掌握し、高い利益率を維持する構造を確立した。FY1985には売上高経常利益率36.6%を達成し、全上場企業の中で日本トップの収益力を記録した。
ただし、ファナックの支配力は汎用品市場に限定されていた。特注仕様のNC装置については三菱電機をはじめとする競合他社が一定の需要を確保しており、ヤマザキマザックやDMG森精機など一部の大手工作機械メーカーは、1990年代にかけてファナックと三菱電機の2社購買体制に移行した。ファナックの高収益構造は「汎用品市場の独占」という限定された領域での価格支配力に依拠している。