重要な意思決定
20228月

筆頭株主が日立からHCJIに異動

背景

日立製作所による上場子会社の整理と日立建機の売却検討

2020年代に入り日立製作所はグループ経営の再編を加速させ、上場子会社の出資形態を順次見直していた。2020年4月に日立化成を昭和電工に売却し、2021年4月には日立金属の売却方針を発表した。日立化成・日立金属・日立建機は日立グループの中でも売上・利益の規模が大きく「日立御三家」と称される存在であり、3社の取り扱いが日立製作所の資本政策における焦点となっていた。

2021年6月の日立製作所の株主総会において、東原敏昭会長は上場子会社の日立建機(日立の保有比率51.42%)について「売却もしくは取得」の方針を2021年度内に結論づけると明言した。親子上場の解消は株主利益の観点から市場の要請でもあり、日立建機の取り扱いは完全子会社化か売却かの二択として整理された。日立建機は安定した収益を計上しており、完全売却には惜しい存在であった。

決断

伊藤忠・日本産業パートナーへの株式26%の売却と親子上場の解消

2022年1月、日立製作所は日立建機の株式約26%を売却する方針を発表した。売却先は伊藤忠商事と日本産業パートナーズが折半出資する「HCJI HD合同会社」であり、完全売却ではなく一部売却の形式をとった。売却後の株主構成はHCJIが26.00%で筆頭株主、日立製作所が25.42%で第2位の大株主となった。

日立製作所はこの売却により日立建機を子会社から持分法適用関連会社へ移行させ、親子上場を解消した。一方で25.42%の持分を維持することで、持分法による投資損益を通じて日立建機の業績を自社の連結決算に取り込む関係を継続した。完全売却でも完全子会社化でもない中間的な選択は、手放しがたい収益源への出資を維持しつつ市場からの親子上場解消の要請に応えるための折衷案であった。

結果

3者が影響力を持つ資本構成の形成と米州事業の展開期待

売却の結果、日立建機の株主構成には伊藤忠商事・日本産業パートナーズ・日立製作所という3者が影響力を持つ構造が形成された。HCJIは伊藤忠と日本産業パートナーの折半出資であるため、実質的には3つの利害関係者が存在する。日立製作所が25.42%を保有し続けていることから、支配権の実質的な所在は完全に移転したとは言い切れず、株主間の利害調整が経営の意思決定に影響を与える可能性がある。

一方で、伊藤忠商事の参画は日立建機の海外事業、特に米州市場の開拓において戦略的な意味を持つ。日立建機は2021年にディアとの合弁提携を解消しており、北米市場で自社販路を構築する必要に迫られていた。総合商社のグローバルネットワークと現地でのビジネス基盤は、単独での販路構築に比べて時間と投資を圧縮する効果が期待される。資本構成の変更は、親子上場の解消にとどまらず、海外戦略の転換と連動した資本政策としての側面を持っていた。