重要な意思決定
19783月

設備投資を積極化

背景

流通整備の完了後に浮上した技術・生産領域への投資必要性

1970年代後半、花王はオイルショック後の回復局面にあった。販社体制を通じた売価統制により洗剤市場では収益が改善していたが、欧米ではP&Gが研究開発と設備投資を継続しており、流通面の優位だけでは長期的な競争力を維持できない状況が明確になっていた。販社整備が一巡したことで次の投資領域として技術力と品質が浮上し、生産・研究への集中投資が経営課題として認識されていた。

花王は販社から日次で集約される販売データを通じて市場の需要動向を把握できる体制を整えていたが、その情報を製品開発に反映するためには、研究開発基盤と製造設備の高度化が前提条件であった。国内日用品市場は成熟に向かいつつあり、海外展開を視野に入れた場合、技術面での国際競争力の確保が不可欠であった。流通の次は技術という投資の順序設計が、丸田芳郎社長のもとで具体化していた。

決断

3年間1200億円規模の設備投資と垂直統合の推進

1978年3月、花王は3年間で1200億円から1300億円に及ぶ設備投資計画を決定した。原料分野を含む垂直統合と生産設備の高度化を通じ、品質向上と研究開発力の底上げを狙った内容であった。1977年にはヤシ油原料の調達拠点としてピリナス花王を設立し、1980年には鹿島工場を新設するなど、川上から川下までの一貫体制を強化する投資が組まれていた。

丸田芳郎社長は、技術は短期間で成果が出るものではないとしつつ、他社が模倣できないシーズが見え始めた段階での投資が重要だと位置づけた。3年間で600億円に達する償却負担を見込みつつも、償却完了後のキャッシュフロー改善を前提に、欧米市場への本格展開に備える順序が描かれていた。流通整備、技術投資、海外展開という三段階の時間設計のなかで、本件は第二段階に位置する判断であった。