王子製紙からの買収提案を拒絶
業界首位の王子製紙が北越製紙の新鋭設備を狙い敵対的買収を宣言
2006年8月に製紙業界首位の王子製紙は、北越製紙に対する敵対的買収を宣言した。株式の過半数を取得することで経営統合を実現する計画を公表し、王子製紙の狙いは上質紙の抄紙機で新鋭設備が充実した北越製紙を傘下に収めることにあった。王子製紙は自社の老朽化した抄紙機を廃棄し、北越製紙の設備に生産を集約することで工場稼働率を改善する構想を描いていた。
これに対して王子製紙の競合である日本製紙が反発し、王子製紙によるTOBが業界秩序を乱すと主張した。日本製紙は北越製紙の株式を取得してTOBの阻止を図り、買収の成否は北越製紙と取引関係にある三菱商事がTOBに応じるかどうかに焦点が絞られた。製紙業界の上位2社が北越製紙をめぐって対立する構図となり、地方の中堅製紙会社が業界再編の焦点に浮上した。
三菱商事への第三者割当増資でTOBを阻止し独立を維持
北越製紙は王子製紙によるTOBを阻止するために、株式の希薄化を伴う第三者割当増資を決定した。三菱商事に対して増資を実施し、同社が北越製紙の株式24.1%を保有する筆頭株主となることで、王子製紙が過半数を取得する道を事実上封じた。北越製紙はこの増資により303億円を資本調達し、表向きの名目は抄紙機への設備投資資金とした。
三菱商事への第三者割当増資により王子製紙のTOBは不成立に終わり、北越製紙は独立を維持した。しかしこの防衛策の代償として、北越製紙は三菱商事の系列企業としての立場を受け入れることとなった。2008年には岸本晢夫氏(三菱商事出身・1999年に北越製紙入社)が代表取締役CEOに就任し、三菱商事との連携を象徴する人事となった。
買収防衛の代償として三菱商事の系列に組み込まれた13年間
三菱商事との提携関係は2019年まで13年間にわたって継続した。北越製紙は独立を守ったものの、筆頭株主である三菱商事の影響下に置かれる構造が固定化された。岸本社長の長期在任もこの資本関係を背景としており、買収防衛のために招き入れた外部資本が経営体制を規定するという構図が生まれた。
2019年に三菱商事との提携を解消した後も、岸本社長の経営体制は継続した。しかし2021年からは投資ファンドのオアシスが岸本社長の長期在任と収益性低迷を問題視するキャンペーンを展開することになり、買収防衛の局面で形成された経営構造が新たな株主との対立を招く遠因となった。