重要な意思決定
2017

米Axaltaの買収中止

背景

グローバル展開と買収防衛の二重目的を含む1兆円規模の買収提案

日本ペイントの経営陣はAkzo Nobel社に対抗してグローバルの塗料事業を強化するため、米国の大手塗料メーカーAxalta Coating Systemsに対して買収を提案した。買収価格は1兆円規模と推定され、日本ペイントにとって過去最大の買収案件となることが見込まれた。グローバル再編が加速するなかで規模の確保が競争上の生存条件となりつつあるとの認識が経営陣の背景にあった。

この買収提案には、大規模な有利子負債を日本ペイントのバランスシートに積み上げることで、ウットラムによる日本ペイントの完全買収を困難にするという防衛的な意図も含まれていたと推察される。グローバル展開の加速とウットラムに対する経営独立性の確保という二重の目的が、1兆円規模という買収提案の規模に反映されていた。

決断

ウットラム側の取締役が財務悪化を理由に買収提案を否決

ウットラムのゴー氏などから構成された日本ペイントの取締役会は、経営陣による1兆円規模の買収提案を否決した。取締役会が挙げた反対理由は、大規模買収に伴う有利子負債の増加により日本ペイントの財務体質が悪化することであった。しかし実質的な反対理由は、負債の積み上げによってウットラムが日本ペイントを完全買収する際の条件が悪化することを回避するためであったと推察される。

Axalta買収の否決は、日本ペイントの経営意思決定がすでにウットラムの影響下に置かれていることを可視化した出来事であった。2014年の増資でウットラムが取締役を派遣して以降、大型投資案件においてウットラムの利害が優先される構造が形成されており、経営陣が独立した判断で大型買収を実行する自由度は事実上制約されていた。