大型設備投資
大型設備投資は、需要が立つ前に生産能力を置く決断である。戦後の日本企業が需要に先行する投資を繰り返せたのは、資金の出どころが銀行だったためである。設備資金は主力銀行が供給し、株式は取引先と相互に保有していた。行政も業種ごとに増設の時期を調整していたから、投資の可否を最終的に決めるのは市場の需要予測ではなく、資金を出す銀行と所管官庁の判断だった。しかも設備は長期にわたって償却される。そのため見込み違いは一期の損益には現れず、稼働率の低下として何年もかけて表面化した。失敗が表面化するまでに猶予があったからこそ、先行投資を連鎖させることができた。
この猶予を前提に、需要を先取りする大型投資が相次いだ。川崎製鉄が千葉に一貫製鉄所を建設して平炉メーカーから脱すると、日本鋼管は福山へ約2,500億円を投じ、旭化成は売上高に匹敵する1,000億円を水島コンビナートへ振り向けた。乗用車専門工場であるトヨタ自動車の元町工場と日本国有鉄道の東海道新幹線は、いずれも1959年に始動している。どれも完成の時点では過大な能力であり、需要が追いつくという前提の上に立っていた。石油危機を機に投資先はエネルギーへ移り、東京電力は福島第一原子力発電所を主力電源に据えた。1980年代後半に重電各社が大型投資を競ったころには、投資の目的は需要への対応から、競合より先に能力を置くことへ移っていた。地価が高騰したバブル期には三菱地所が丸の内の大規模な再開発計画を掲げ、投資の対象は工場から都市の不動産へ広がった。
ところが、失敗が表面化するまでの猶予は二つの点で短縮された。第一は設備の寿命である。2000年代にシャープが堺に世界初の第10世代液晶ラインを敷いたとき、設備が陳腐化するまでの年数は製鉄所よりはるかに短かった。回収に許される期間が短ければ、需要予測を誤る余地も小さくなる。
第二は会計である。将来の収益で回収できない設備は、帳簿価額を切り下げる減損として一期で処理され、稼働率の低下を待たずに損失が顕在化する。需要に先行して能力を置く判断そのものは変わらない。変わったのは、予測を誤ったときの損失の現れ方である。
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キャッシュ・フロー計算書の投資活動による支出、なかでも有形固定資産の取得による支出で金額を押さえる。これを減価償却費と並べ、償却を上回る期が何年続いたかを見れば、拡張か維持かを判別できる。建設仮勘定の残高は工事中の投資が積み上がった額で、完成年度に本勘定へ振り替わる。主要な設備の状況で所在地・帳簿価額・生産能力を、設備の新設、除却等の計画で今後の投資予定額と資金調達方法を確認する。稼働率と減損損失が回収の成否を示す。
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